俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。
「あ、朝陽おかえり」
母さんのその声にドアの方を見ると、兄貴も帰ってきて
かと思えば父さんも風呂から出てきて
リビングには家族全員がそろった。
「あれ、みんなここにいるの珍しいね。
特に飛鳥。いつもならまだバンドの練習やってんじゃないの?」
「あー、明日文化祭で朝早いから、練習も早めに切り上げたんだよ」
「あ、文化祭明日なの?」
「まぁ公開日は明後日で、明日は校内発表なんだけど」
「へー?
飛鳥は明後日バンドのライブすんでしょ?
チケット売れてる?」
「いやもうとっくに完売してるから」
「はは、だろうね。
俺も見に行こうかなー」
「え、いや絶対来るなよ」
兄貴の発言に、俺もビビったけど飛鳥は即反対していた。
俺も絶対反対。兄貴と家族って絶対バレたくない。
…とくに、涼すけには。
「えー、でも私も行きたい」
「いや母さんも来るなよ。
ってか絶対浮くから」
「本当だよ。
そもそも母親ってそんなに来ねぇのに、そんな派手な見た目で」
「え、でも今は髪の毛も金髪でもないのに」
「いやなんか雰囲気派手なんだよ」
「えー、そうかなー?」
少なくとも、そこらへんの母親よりは絶対に派手。
前に三者面談の時に友だちの母親見たけど、うちとは全然違ったし。
そんな母親、見たことねぇよ。
「でもさぁ、たまには飛鳥が歌ってるとこ、みてみたいよ?」
「あ、俺もそれは見てみたい」
「え、父さんまでなに言ってんだよ。
絶対来るなよ!」
「まぁ俺はどっちみち明日撮影で行けないし」