俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。

「碧翔は好きな人とかいないの？」

「は、俺？」

「うん、あんまりそういう話しないし」


俺なー…
お前のこと好きなんだからさー…

そういう話することもできないし、聞かれても毎回教えてあげられないんだよなー…


「…俺はそういうの、誰にも言わない主義なんだよ」

「え、なにかっこつけてんの」

「別にかっこつけてねぇし！」

「似合わないよ、そういうの」

「だからかっこつけてねぇっつーの！」


いつもいつも、俺のことをからかいやがって！
最初の頃は俺が一方的にからかってたはずなのに！
いつのまに形成逆転してんだ！！


「ってかさっきから気になってたんだけどそれなに？」

「え、あぁこれ？
演劇部の台本」

「え、そうなんだ。
碧翔なんの役？」

「なんか犯人の親友役だって」

「へー、どんなセリフ？」

「え、まだ見てねぇ」


そういや俺どんくらいセリフあるんだろ。
ちょい見とくか…


・・・って


「え、俺セリフどこ」


待って待って待って
俺役名なに？どれよ、これ
どこみりゃいいの


「・・・碧翔、そんなんで大丈夫？
もう明日でしょ？」

「…まぁ、たぶん
そんなセリフ多い役じゃないだろうし、さすがに」


ってかこれ、リハとかあんのかな
まさか一発本番じゃないよな？さすがに…

いくらなんでもそれはなさすぎ…


「…まぁなんとかなるだろ！
あ、涼すけちゃんと見に来いよー？
俺がステージに立つことなんて一生に一回なんだからな！」

「あはは、そうだね
ちゃんと観に行くよ」