俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。
__で、結局
母さんから明確な答えはこないまま、家族揃って夕飯になった。
6人そろって飯とか、なんかめっちゃ久しぶりな気がする。
「今日これ母さんのご飯?」
なんか、いつもと味が違う気がする。
なんとなくさゆりさんっぽくない、というか…
「あ、今日俺。
母さん帰ってくるの遅かったし、俺の方が早かったから」
「え、兄貴のか」
なんか、さすが。
帰ってくるの早かったからって、俺飯作ったこと1回もないわ。
ってか俺作れねぇ。
「兄貴って一人暮らししたりしねぇの?」
「俺も思ったー
なんかもう20歳なわけだし、ここ出てきたいとかないわけ?」
「え、だって別に不便ないし」
「いやそういう問題じゃないと思うけど」
なんか…稼ぎもあるわけだし、家出て行ってもいいような気もするけどなぁ。
俺なら絶対出ていく。こんな、誰も呼べないような家にいたくない。
「んー、あんま考えたことなかったかも。
父さんと母さんはいつから一人暮らししてた?」
「え、私たち?
私たちは16歳では一人暮らしだったし、18歳で結婚したし」
「ってか俺ら特殊だよ。俺も17歳の頃には両親いなかったし。
あんま参考にならないと思うけど」
16歳で一人暮らし…
なんだそれ、どんだけ早いんだよ…
…あ、でも
父さんは子役から、母さんは16歳で芸能界入ったんだっけ
2人とも金あったんだな…
「朝陽もきっとそういうタイミングが来るよ。
私たちもそのタイミングで1人暮らしするようになったわけだし。
別に急ぐことないよ」
…でもいつか、兄貴もこの家を出るときがくる。
そう考えたら、なんか寂しいもんだな。
普段からあんまり一緒にいるわけじゃねぇけど…