俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。
俺は飯を食い終わったら、すぐにダイニングからたって演劇部の台本を開いた。
役名はヒロキ。やっとわかったわ。俺ヒロキなんだ。
犯人役がユウ。
さすがにセリフくらいは覚えないとまずいよな…
えー、と
「碧翔、ちょっと」
「ん?」
これから覚えよう、と思ったら
俺の肩を父さんが叩いた。
父さんを見れば、手招きしていたから、俺は誘われるがまま立ち上がってリビングを出た。
「なに、どこ」
そのままついていくと、父さんは自分の仕事部屋へとやってきた。
「演技、やるんだろ?
練習付き合うよ」
「え、やだよ」
「は?なんでだよ」
「いやなんかやりにくいわ…」
「まぁそういうなよ。
とりあえず読んでみろよ」
えー…
だって父さん演技のプロじゃねぇかよ。
役者やってんじゃんかよ…
「…”なんで言ってくれなかったんだよ、そんなに悩んでること”」
「いやどんだけ適当なんだよ。
それで本気で明日本番出るのかよ」
「いやだって俺も今初めてこの台本開いたところだし」
俺がそういうと、父さんは俺の台本を奪った。