俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。
俺は仕方なく、またリビングへと戻った。
「なぁ、飛鳥」
「あー?」
「お前さぁ、人前で歌うの、恥ずかしくねぇの?」
「あー、まぁ最初の頃は恥もあったかも。
でも今は別に」
「なんで?慣れたから?」
「慣れもあるだろうけど、でもたぶん
自分に自信がついたからじゃね?
普通に歌って、誰かがそれ聴いてくれるわけだし
そういうのが楽しいし、自分に自信がついたんだと思う」
「楽しい?」
「え、まぁ。
俺は歌ってて楽しいけど。
母さんは?歌ってて楽しいよな?」
「え、私?
んー、楽しいのもあるけど私の場合はここにいるよーって主張だったのもあるかも」
「はぁ?主張?」
「そ。私はここにいますよーって。
昔同じようなこと言ったけど、ここにいていいよって場所がほしかったから歌ってただけ。
私の場合は今の社長に捨てられたくなかったのが一番だったかな。
期待に答えたかっただけ。
だから飛鳥とはちょっと違うかな。
飛鳥とか朝陽みたいに夢もって活動してる人の方が圧倒的に多いと思うけどね」
「…あんま参考にならねー」
「え、参考にしたくて聞いてきたの?」
「まぁ…
父さんが、演技に楽しさ見つけたらいいっていうから」
「楽しさ?へー…」
楽しさ、父さん感じて演技してんだなー…
いやまぁ仕事は楽しそうなんだけど。
でも演技に楽しいとか、なんかよくわかんね。
なんか父さん映画の撮影とかに入るとすげぇ過酷スケジュールだし、過酷な役だと見た目すげぇ疲れてるけど…
それもまた楽しいんかな
俺にはよくわかんないなー