俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。



その日、俺は何度も何度も台本を読んでいた。
読んで、声出して、声出して、声出して…

気づけば、もう23時になっていた。


「やべー…そろそろ寝ねぇと…」


明日演劇部で朝練あるんだった…
俺このままじゃまーた寝坊するわ…

・・・とりあえず水だけ飲みに行くかな


俺は部屋を出ると、隣の部屋から飛鳥の歌が聞こえた。


あいつ、まだ練習してるんだなぁー…
あいつも明日朝練習あると思うのに。


「あれ、碧翔?まだ起きてたの?」


リビングに入ると母さんが1人、パソコンに向かってなにかしていた。


「あー、うん
一応練習してたやつ」

「そうなんだ。楽しさは見つけられた?」

「んー、いまいち」

「はは、そっか。
まぁきっと明日みんなと合わせてみたら、きっと楽しくなるよ。
今は1人だからそう思うだけで。みんなとやると楽しいよ、きっと」

「…そういうもんかねぇ」


俺はそれだけいって、ダイニングに行き、水を一口飲んでまたリビングへと戻った。


「…ってか、明日母さん文化祭来ないよな?」

「逆に、なんで私が文化祭行くのかなって思うの?」

「飛鳥が教頭に母さんによろしくって言われたらしいから」

「え、それだけ?ってか飛鳥それ私に伝えてないし…」


ってか別に伝えたところでだから何って感じもするけど。


「…まぁ俺寝るから」

「あ、碧翔」

「んー?」

「お父さん、今練習部屋にいるから行ってみたら?」

「え、なんで」

「いいじゃん、たまには見学しなよ」


・・・なんのためにだよ…


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