俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。


「……え?」

「いきる世界が違うって言っても結局人間なわけだし
確か渋谷区にすんでるって前テレビで言ってたし

…案外、近くにいたりするかもじゃん。
モデルだろうが芸能人だろうが、すんでるところは一緒だろ」


……朝陽なんて、別に別の世界の人間じゃない。
特別な人間なわけじゃない。

俺と同じところで同じように生きてきた。

…なのに、どうして俺は兄貴と違ってこうなんだろう…


「……それ、励ましてくれてんの?」

「・・・え?」

「ってかそんな本気モード、碧翔に似合わなすぎだから!」

「は!?うるせーよ!」

「……でも、ありがと」


……俺、別に励まそうといった訳じゃないんだけど…ま、いっか。
こいつがこんな楽しそうに笑ってんなら。


「…おう」

「ってか家ここらへん…?超高級住宅街じゃん…
なんか場違い感半端ないんだけど…」

「もうつく」


それから歩くこと数十メートル
無事帰還。お疲れ、俺。


「ここ。」

「は!?」


この閑静な住宅街に響く涼すけの声を通りすぎて、俺は鍵を開ける。


「ん。入れよ」

「………お邪魔します…」


たぶん、あんまり見慣れないであろうこの豪邸に入るのに躊躇する涼すけだけど

俺も誰かをここに呼んだことがない上に第一号が好きな女でどうしたらいいのかわかんなくて
かなり、たどたどしい。



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