SUGARと堕天使。
「あー、そーだね。でもま、いいんじゃん?」
そうあたしが言った直後に、永沢があたしの名前を呼んだ。
「おーい、佐藤。頼みがあるんだが」
29独身の永沢郁美は、喋り方がかなり芝居がかっている。
手招きする永沢のもとへ、あたしは小走りしていった。
「永沢せんせー、どーしたの?」
「悪いが、これを飯島の家に届けて欲しいんだ。家も近いし、引き受けてくれるだろう?」
「えー、飯島さんなら、方向真逆ですけど。」
「いや。飯島宮子じゃなくて、飯島尚樹のこと。」
あたしはてっきり、今日たまたま風邪で学校を休んだ<飯島宮子>だと思っていたから、ナオキという名前を聞いて正直驚いた。
「え、あたしの家に近いんですか?」
「そうそう。頼むから!」
佳織に目配せすると、佳織は小さく頷いた。
だめだ・・・あれは完全に好奇心の目だ。
「・・・わかりました。届けるだけですからね。」
「おー助かるぞ。んじゃこれよろしく。」
永沢はあたしに、封のしっかりされた大きめの茶封筒を一つ渡した。
案外重い「それ」をしっかり持つと、そのまま早歩きでがっこうを出た。
「どんな人なんだろーねぇ!」
佳織がテンション高めに、笑っている。
人一倍好奇心旺盛な佳織見て、あたしはため息をついた。