SUGARと堕天使。
「あ、こんにちは。」
静かに言うあたしに対して、佳織は相変わらずのペースだった。
「どーもぉ!クラスメートの吉原佳織ですー。なんか、先生に『これを届けてほしい』って頼まれたから来たんだー。突然ごめんねー?」
常に異常なテンションを保つ佳織を見て、飯島は密かに眉間に皺をよせた。
まぁ、無理もないけど。普通の人なら、イラッとくるだろうし。
「ねぇ、シホ。封筒。」
佳織に言われたとおり、あたしは茶封筒を飯島に手渡した。
少し、封筒の四隅が折れ曲がってしまっている。
「あ、ごめんなさい。封筒・・・」
「いや、別に」
素っ気無い態度で、飯島は茶封筒をうけとった。
あたしは不意に、飯島の顔を見上げた。
ボサボサの髪。だけど、結構整った顔。淡い茶色の瞳がよく映えている。
「・・・何か?」
そう言われて、さりげなく視線をそらし佳織の横に戻った。
佳織は相変わらず、飯島に興味深々なようだ。
窓から強い風が吹き込んで、あたしの髪をゆらした。
「よし、帰ろう。佳織。」
「え?もう?」
「当たり前でしょ。どうもおじゃましました。」
笑顔を作って飯島に一言言うと、佳織の腕を掴んで半強制的に部屋をでた。
階段を駆け下り、玄関で乱雑に靴をはいてドアを押す。
「おじゃましましたぁ!!!」
大声で叫んで、家をでる。
「ちょ、ちょっと!シホ!痛いって!」
歩みを止め、パッと手をはなした。
「ごめん。全く~、佳織調子に乗りすぎだよー。いくら同い年とはいえ、クラスメートとはいえ、初対面なんだから・・・」
「だってさ、意外だったじゃん!格好よかったよ!なんで登校拒否してんのか意味分かんないもん。ていうか、あの女の子も何なんだか分かんないし・・・超楽しいんだけど!」
何がだよ・・・という言葉を飲み込んで、帰ろ。と言って飯島家をあとにした。