SUGARと堕天使。
ドアノブをゆっくりひねってみると、扉は開いてしまった。
カーテンがあいてないのか、薄暗い。
部屋に入った瞬間あたしは、肩にかけていたバッグを落としてしまった。
壁に貼ってある無地のカレンダーから、人がでてきた。
いや、でてきた、と言うよりは、帰ってきたのだろう。
飯島尚樹が、茶色い瞳であたしを捕らえた。
間抜け顔のあたしを見て、飯島も口をポカンと開けている。
「あ、はは・・・は、どうも、こんにちは・・・」
完全に引きつった顔で唇の隙間からなんとか声をだした。
飯島は状況を理解したらしく、冷静な顔に戻って、大きく息を吸った。
「レインーーーーー!!!!!!!」
鼓膜が破れそうな大声で飯島は叫んだ。
きっと、あの少女が「レイン」なのだろう。
ドタドタドタッ
階段を必死に駆け上がるような音がした。
「尚樹様、ごめんなさいっ!」
あんな小さな少女がぺこぺこと頭を下げている。
飯島はかなり怒っているらしく、かなりの殺気に満ちていた。
「ああ!もう!人間にみられた!どうするんだ、レイン!人間に知られたらおしまいだ!また移動か!もう、嫌だからな俺は!」
半狂乱になりながら、飯島は声をはりあげた。
あたしは状況がつかめず、部屋の真ん中で立ち尽くしていた。