好きが伝われ


「待って待って、泣かないで」


恒樹さんは私の頭をよしよししてくれる。

「だって、私みたいに勇気も自信もない人からしたら、恒樹さんは勿体ないですもん…」


いい子ぶるなって思われてもいい。



私なんかより素敵な人が、恒樹さんにはたくさんいる。

私じゃダメだよ。



「もう…」


帰る途中なのに泣き出す私を抱きしめる恒樹さん。


急に抱きしめられて、頭がついて行かない。


「紫衣ちゃんは、いい子すぎるし素直すぎる」

「へ?」


「俺は、紫衣ちゃんが思ってるほどのすごい男じゃないよ。

ごく普通の男。紫衣ちゃんに気に入られたくて優しいふうに見せて我慢してた。


ほんとは、塩谷と一緒にいるとこだって見たくないし応援もしたくない。」



頭一つ分、身長が違う恒樹さんの顔を見上げる。

「その顔、反則。」


そう言っておでこに軽くキスをしてくる。


「ひゃっ、い、、いまっ、おで、こに!!」

顔がどんどん熱くなるのがわかる。
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