好きが伝われ
「そんな落ち込むなよ、リレーでは頑張れよ?俺の前なんだし」
「…え!?リレーってなんのこと?」
リレー!?そんなの聞いてないけど?
「は?最後の色別リレーだよ。俺らのクラスからは、俺と紫衣だけど?」
「いやいや、そんなの聞いてな…あぁ!」
そうだ、何でも良いよって言っちゃったから…
でもだからって、リレーになることある!?
「自業自得だろ?ちゃんと話し合いには参加しろよ」
「うぅ…」
今回ばかりは、翔太の言うとおりだ。悔しいぃぃ!
「ま、俺はとりあえず騎馬戦とかあるし?行くわ」
翔太は立ち上がって保健室を出ようとする。
入り口でぴたっと止まる。
「どした?」
私が聞くと、振り向いて「頑張れの一言もないのか!おまえは!」と怒られる。
えぇ、そんなこと!?
「うるっさいなぁ!」
私は翔太の所まで行って、背中を思い切り叩く。
「いってぇ!!」
「『頑張れ』の一喝。ほら、招集かかってるから早く行ってきな!」
翔太はニコニコしながら、グラウンドに駆け足で向かう。
「見ちゃった~」
歩夏が入り口から、ひょこっと顔をのぞかせる。
にやにやしながら見てくる。
「なに…」
「青春ですなぁ~」
「ちーがーう!」
歩夏のニヤニヤは止まらないけど、それはおいといて。
私たちは、騎馬戦を観戦しに行く。
私たちのクラスからは、翔太と莉玖君が出るからちゃんと見てあげなくちゃ。
「赤組対黄組です」
アナウンスの後に、パァンと空砲の音。
一斉に騎馬が動き始める。
翔太の騎馬も、莉玖君の騎馬もまだ生き残ってる。
周りの観覧者が、わーきゃー言ってる間に試合はどんどん進んでいく。