好きが伝われ



屋上まで来ると、夏の蒸し暑い風が肌に触れる。


暗くて、周りがよく見えない。

「真希?」


呼んでみるけど、人が出てくる様子は無い。
かわりに声が飛んでくる。


「呼ぶ相手…間違えてる」


え?今、、

前から誰かが近づいてくる。

影がだんだん濃くなって、色も見えてきた。



「しょうがねえか。直接言ったわけじゃないしな」


その声はずっと電話の向こうから聞こえてた。

今みたいに、クリアに聞こえるのは久しぶりだ。



もっと聞きたい、そう思わせるのはこの世で1人だけ。



やっと、目も、鼻も口も、匂いさえも感じる位置まできた。

その時点で、涙がポロポロと溢れてた。


「ただいま、紫衣」


目の前にいるのは、紛れもない翔太だ。

「もー、遅すぎるよ〜うぅ…」

「あ、もう泣いてんの?嘘だろ?」


翔太は仕方がないというように、私をギュッと強く抱きしめる。

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