好きが伝われ
仕事は集中したけど、そのあとはどっと疲れが身体中を巡った。
仕事を終えて、退勤する。
電車に揺られながら、頭にあんのは紫衣のことだけ。
あいつ今何してんだ、どこにいるんだ、誰のこと考えてんだ。
そう思いながら家に向かう。
鍵を開けて中に入ると、暗かった。
いつもはあいつが先に帰ってるのに。
おかえり、お疲れってあの声が聞こえねぇと、こんなにしんどいもんか。
リビングに入ると、点々とロウソクがついてた。
テレビがついてて、そこには俺と紫衣の写真がスライドショーになってた。
小学生の時の写真も、中学の時のやつも。
高校の時、最近の。
スライドの最後に
『誕生日おめでとう、大好きな翔太へ』
そう書かれてた。
「はいチーズっ」
カシャ
携帯のシャッター音が聞こえた。
「おかえり翔太っ。お誕生日おめでとう!」
「は?え?」
「いや、え?って今日は22歳の誕生日じゃん。自分の誕生日も忘れた?」
そういや、今日…誕生日だ。