好きが伝われ


仕事は集中したけど、そのあとはどっと疲れが身体中を巡った。


仕事を終えて、退勤する。



電車に揺られながら、頭にあんのは紫衣のことだけ。



あいつ今何してんだ、どこにいるんだ、誰のこと考えてんだ。


そう思いながら家に向かう。



鍵を開けて中に入ると、暗かった。

いつもはあいつが先に帰ってるのに。


おかえり、お疲れってあの声が聞こえねぇと、こんなにしんどいもんか。



リビングに入ると、点々とロウソクがついてた。

テレビがついてて、そこには俺と紫衣の写真がスライドショーになってた。



小学生の時の写真も、中学の時のやつも。


高校の時、最近の。



スライドの最後に

『誕生日おめでとう、大好きな翔太へ』

そう書かれてた。


「はいチーズっ」


カシャ


携帯のシャッター音が聞こえた。

「おかえり翔太っ。お誕生日おめでとう!」

「は?え?」

「いや、え?って今日は22歳の誕生日じゃん。自分の誕生日も忘れた?」



そういや、今日…誕生日だ。

< 167 / 177 >

この作品をシェア

pagetop