好きが伝われ
「紫衣ちゃんは、好きな人とかいないの?」
「え?私?」
好きな人。
そんなことは今までは、考えたことがなかった。
中学の頃は、部活に熱中してたし。
「なにとぼけてるんだか」
「と、とぼけるって。」
「ま、逃げなきゃ分かることもあるから。」
逃げなきゃ分かること?
莉玖君、何言ってるんだろう。
「はい、着いたよ」
「うん。ありがと」
「そんな落ち込むな、紫衣ちゃん。俺も落ち込む気持ちは分かるから」
なぜ私は今、慰められてる?
「じゃ、おやすみ」
「うん、気をつけてね」
はぁ。
家に入ると急に疲れが出てきた。
歩夏、本当なのかな。
翔太のことが、好き…なんて
正直、信じられないけど。
でも、本当なら。
私は、歩夏を応援する。
親友だもん。
別に、翔太のことが、好きな訳じゃない…うん。
そう、好きなんかじゃない。