好きが伝われ
はぁ、私ここに落ち込みに来たの?
「あれ?紫衣ちゃん?」
ん?誰だ?
呼ばれた方に顔を向けるけど、人が多すぎて誰が呼んだかも分からない。
そもそも、私が呼ばれるわけないか。
「紫衣ちゃん!」
「わっ…あ、伊賀さん?」
前に体育祭で話した先輩。
「こんなとこでなにしてるの?ていうか、下の名前で呼んでよ。堅苦しいしさ」
「え?下の名前なんて、そんな無理ですよ。一応年上なんですし」
「恒樹~?」
「あ、先行ってて!後で合流する!」
伊賀さんは、友達を促す。
「いや、友達の所行ってくださいよ!」
「いいの~。今一人?だよね?」
「え、まぁ」
「じゃ、俺につきあってくれる?」
「えぇ!?」
伊賀さんに、強引に連れて行かれる。
どこに行くの?
「そういえば、いつも一緒にいるあの子は?えっと、塩谷だ」
「あぁ、はい。今日は一緒じゃないです。たぶんこれからも…」
「ふ~ん?そうなの?」
翔太が、歩夏とつきあうことになるなら。
今まで通りって言うわけには、ならない。
「俺、祭りって好きなんだよね~」
連れてこられたのは、屋台が並ぶ祭り会場。
「え?これ私と一緒に行くつもりですか?」
「うん、そうだけど?」
そんなの、聞いてない~!
いや、私と知り合って今日で二回目ですよ!?
「なんで、私なんかと?」
「ん~、何でだろうな!よし、行くぞ」