好きが伝われ
「でも…紫衣が諦めたところでダメだった。」
「え?それ、どういうこと?」
「振られた」
え?だって…花火行ってたじゃん二人で。
「嘘ついて誘ったんだ」
「え?嘘って?」
「紫衣と莉玖が待ってるから一緒に合流しないかって」
歩夏が、そんなことを?
「そしたら塩谷。私なんかに見向きもしないで、紫衣のこと探してた」
「だから、もう言うしかないって思った。振り向かせたかった、一瞬でも」
ーーー花火大会の日
「もしもし塩谷?今日花火大会行くんだけど行かない?」
[あ?行かねぇよ俺用事あるし]
「いや、紫衣と莉玖が先に行ってるから合流しようよ」
[え?紫衣のやつが?…なんで莉玖と]
会場は人でたくさん。
この先にいると嘘ついた。
頑張って歩く距離も縮めてみても、何も無かった。
肩を触るでもなく、手を繋ぐのでもない。
ただ塩谷は、周りをキョロキョロしてた。
「あいつらいねーな。」
あいつら?そうじゃない。
塩谷が、探してるのは1人しかないないじゃんっ
なんでよ。なんで…
「こっち近道っ!」
そんなのあるはずもない。
人の通りが少ない路地に連れていく。