暴走族の天使〜紡ぐ言葉を聴きたくて〜
詩side

お披露目暴走まであと数日…

何事もなく無事に終えられたら

イイなぁ〜

昼休みの教室で律とランチタイム中

私も律もお互いに自炊なんだよ〜!

だからお互いのお弁当を交換して

ちょっとした意見交換したりするの

もう少しこうしたら…とか

こうしたらもっと美味しくなるんじゃない?とかね

余程の事がない限りは休み時間という

時間全ては律と過ごしてるの

北斗達はそれを尊重してくれてるから

とても有り難い

そして改めて北斗達は優しいって思う

私の夢の女子高生ライフのひとつを

大切にしてくれてるのですっ!

だからこうして心から楽しめてるんだぁ〜

オシャレの話、料理の話、好きなTVの話

ガールズトークは止まらないのです〜

もう楽しくて嬉しくて!

全部筆談になるんだけど

律はそのままの私を受け入れてくれる

それがどれだけ私を幸せにしてくれてるか

言い表せない感謝の気持ちで

胸がいっぱいなの…

こんな素敵なお友達、私には

居なかったから…

少し過去にトリップしていた私は

律の声に引き戻される

「お披露目はいいけど…
暴走なんて、詩大丈夫なの?
すごく心配だわ…」

律には姫と認めて貰えた翌日に話したの

星竜の姫、星姫になったことをね!

その時もすっごく心配してくれて

今もまだ心配させちゃってるみたい…

でも守ってくれるって約束してくれたし

私も守るって約束したから!

安心して欲しくて私は笑顔で律を見る

≪ありがとう、心配してくれて!
でも大丈夫!
こう見えて私色んな修羅場を潜り抜けて
きた強者だよ〜?
だから、笑って応援して欲しいな!≫

「分かった、応援する。
でも、強者の詩が困った時は
いつでも話聞くからね?
友達なんだから…分かった?」

困った表情を浮かべながらも

笑って頭を撫でてくれる律は

私のお姉ちゃんみたい!

困った時は必ず話すね!

笑顔で私は頷いた


ーー暴走当日

ついにやって来ました!お披露目暴走!!

もう、今日は朝から落ち着かなくて

まるで遠足前の子供みたいな気分〜

放課後、校門前で律から

「怪我だけはしないでよ?
無事に終えられるように祈ってるから」

と、御守りと温かいお言葉を頂き

私は笑顔でバイバイした

そして、現在倉庫の中では

星竜みんなが暴走に向けての

最終確認中です

ルートの確認や他の族の動き

倉庫に残る人達への対応や指示とか

手慣れてる感が半端なくて

私は階段の上の方から座って観察中です!

姫なのに、何となくアウェーな感じがするのは気のせいでしょうか?

みんなの輪に入りたいけど

暴走族用語?がちんぷんかんぷんで

話に入り込めなくて早々に退散して

ここで1人待機中なんだけど

忙しいのは見れば分かるの!

でもね…誰か構って〜!!

寂しくて拗ねちゃうよ、私…

若干ブゥ垂れてる私に数段下から

声を掛けてくれたのは北斗だ

もう、準備できたのかなぁ?

「詩、おいで」

黒地に金糸で刺繍された特効服に

【星竜 15代目総長 流川北斗】の文字

普段は寂しがりの甘えたさんなのに

特効服を身に纏う北斗を見ると

総長なんだなぁと改めて実感させられる

少し距離を感じてしまう私は

片手を伸ばして呼ぶ北斗に

思わず飛びついちゃった!

だって寂しかったんだもん…

そのまま片腕に抱えられて倉庫の外へ出た

北斗の視線の先には…

真っ黒でつやつやな車が凄い威圧感を放って

停車してる

すっごい高級な車っぽいけど

そんな車が何故ここに??

首を傾げて北斗を尋ね見る

「この車は総長と姫しか乗れない車だ。
代々受け継がれてる車で、こういう
暴走の時に使う」

そうなんだぁ…

代々受け継がれている大切な車なんだね

乗れるのは総長と姫だけなのか…

この世界の事をまたひとつ知れた!

≪北斗はバイクに乗らないの?
みんなみたいに…≫

ノートに素朴な疑問を書いて見せた

車へ視線を向けたまま北斗は語り始めた

「普段の移動程度なら俺ももちろん
バイクに乗るが…
今回は姫のお披露目暴走だ。

その暴走中に抗争を仕掛けられたら
詩に危険が及ぶ。
抗争も大事だが姫を守ることが
何より1番の優先事項だ。

姫を守るのは仲間ももちろんだが
総長の俺の使命だ。
誰よりも傍で守る…
だから暴走の時はこの車に乗る。

そしてその車を守りながら
バイクに乗った仲間が走る。
それがお披露目暴走だ」

姫である私を守る為の措置…

守る為の最善策…

奏が何が起こるか分からないと

話してくれて覚悟してたつもり…

だけど、優先事項の1番が私だなんて

もし今日抗争が起きたら

私は守られ、みんなは怪我をするかも

しれない…

そう思ったらすごく怖い…

黒の特効服を着る北斗の胸元を

ギュっと掴んでぴったりと引っ付いた

私はみんなが怪我をしないように

祈る事しか出来ないの?

みんなが傷付けられるのが怖い

怖くて堪らないよ…

私の不安を読み取ったかのように

北斗の優しい声が降る

「詩が俺達を心配してくれるのは
すげぇ嬉しい。
俺も仲間が傷付けられるのは嫌だ。
けど、それが暴走族だ。
この世界に足を入れた時点で
危険や怪我は覚悟してる、俺も仲間も。

けど、俺や仲間には守るべき姫がいる。
守るべきものがあるやつは強くなれる。
それが詩、お前だ。

詩がいるから俺達は何があっても
無事に帰って来ようと思える。
帰りたい場所があって
そこに大切な人が待ってる…

それだけで頑張れる。
だから、詩には笑顔で待っていて欲しい
俺達の力の源は、詩だから。

笑ってお帰りって言ってくれるか?」

顔上げた視線の先には

優しく微笑む北斗

それが姫の、私の役目なら

みんなが頑張るなら私も頑張る

笑顔でお帰りって言うから

約束するから…

北斗も約束だよ?

絶対にただいまって

笑顔で帰って来てね?

北斗の目の前に小指を差し出した

「約束だ」

お披露目暴走まであと少し…

北斗と2人、笑顔で約束の

指切りげんまん!





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