暴走族の天使〜紡ぐ言葉を聴きたくて〜
詩side

今からお披露目暴走が始まります!

で、その前に総長である北斗が

階段の踊り場から暴走前のご挨拶!

「今日は星姫お披露目暴走だ。
何もないことを願うが、何が起こるか
分かんねぇ…
お前ら、気ぃ引き締めとけよ!
行くぞっ!!」

「「「うおおおおおっ!!!」」」

倉庫が揺れてるんじゃないか!?と

思わせるほどの声に、思わず肩が

ビクっと跳ねちゃった!

それぞれがバイクに跨り

エンジンを吹かす中

私は北斗と共に黒の車に乗り込んだ

窓から見えたみんなはいつもの

年相応の男の子ではなくて

目をギラギラさせて、でも真剣で

とてもカッコイイ!

バイクのランプがあちこちで輝いてて

真っ暗な空に浮かぶ星のようで

すっごく綺麗…

窓に張り付いて子供みたいに

はしゃぐ私

それを優しく見つめる北斗にも

お披露目暴走の運転手に抜擢された

下っ端の時田真也(ときたしんや)くん

通称真くんもミラー越しに笑っていたのも

私は知らない

そして…

「出せ」

北斗の声が聞こえたと同時に

沢山のバイクと車は動き始めた

片道2車線の道路を星竜のみんなが

バイク特有の音を響かせながら

走り抜けて行く

その姿はまるで羽根が生えたように

縦横無尽に動き回る

それはまさに圧巻の一言だ!

窓に張り付いてみんなを見つめていると

一台のバイクが近づいてきた

そのバイクの運転手は

茶色のウェーブを靡かせて微笑む

奏だった

慌てて窓を開けて手を振って

予め用意しておいたノートを

取り出して見せた

≪安全第一!気を付けてね!≫

それを見て優しく微笑みながら

頷いて前方へと去っていった

窓を開けたまま乗り出す勢いの私

完全なる無意識だったんだけど(苦笑)

北斗にちょっぴり怒られました…

「詩、楽しいのは分かってるが
あんまり乗り出すなよ。
落っこちそうで怖ぇよ…
まぁ、俺が一緒だからそんな事には
ならねぇけど」

余程心配なのか私の腰に腕を回して

落っこちないようにしてくれてるんだけど

私、そんなに鈍臭く見えてるの?

まるでお父さんと子供みたい…

プクッと頬を膨らませてみても

「そんな可愛い顔しても
駄目なもんは駄目だ。
窓から離れたくなきゃ大人しく
言うこと聞けよ」

と何とも意味不明なお言葉…

可愛い顔ってなに?

北斗、眼科に行った方がいいと思う…

あとでゆっくり教えてあげよう〜

とりあえず北斗の言う通りにすれば

窓から離れなくていいんだよね?

だったらここは大人しく

頷いておこうーっと!!

頷いて窓枠を掴んで後方に目を向けると

ものすごい勢いでこっちに

向かってくるバイク…

しかも2台も!!

どんどんと迫ってくるバイクには

ニカッと太陽みたいな笑顔の錬と

ニコニコ笑顔の天使みたいな奈留

並列で私に近付く2人

「詩!楽しんでるか〜!」

「詩ちゃ〜ん!楽しんでるぅ〜?」

と、言い方は違うけど

私を気遣ってくれる2人に笑顔で頷いた

「「俺(僕)らも、めちゃくちゃ
楽しいぜ(よ)!!」」

と同時にVサインする2人は

無邪気な子供みたいで可愛い!!

さながら、お母さんにでもなったみたい

≪安全第一!気を付けてね!≫

奏の時のようにノートを見せた

2人同時にVサインをして

来た時同様にものすごい勢いで

前方へと走り抜けてった

外見は全く違うのに

やる事も喋る内容もタイミングも

全部同じって…

ふふ、本当に仲良しさんなんだなぁ〜

1人クスクス笑う私の視界に

首を傾げる北斗が見えたけど

眼科の事も含めて後でゆっくり

教えてあげよう〜!

…なんて1人でほくそ笑んでいると

ーコンコン

小さな音がした

ふと視線を移した先には

無言の冬がいつの間にやら車と並走してて

すっごくびっくりしちゃった!

ジーッと見つめてくるだけで

何も発しない冬に笑顔でVサインしたら

「…(コクコク)」

と頷いて小さくVサインを返してくれた

そんな冬にもノートを見せた

≪安全第一!気を付けてね!≫

「…(コク)」

頷いて静かに走り抜けて行った

未だに頷く以外はしないけど

今日はVサイン返してくれて

すっごく嬉しい〜!!

少しだけ冬と近付けた気がして

本当に嬉しかったよ

その後も凛くんや幸くん、宏くんが

声を掛けてくれたり

他のみんなも手を振ってくれたりして

すっごく楽しめたの!

そして、無事何事もなく

お披露目暴走は終了して

倉庫に着いたら待機組のみんなが

笑顔で迎えてくれて

≪ただいま!すっごく楽しかった!≫

と書いて見せたの

そしたら、みんなに良かったね!なんて

頭を撫でられたりしてまた笑った

倉庫に全員集合したあと

北斗の締めの言葉…

「今日はお疲れさん。
無事何事もなく暴走を終えることが出来た。
今からその成功と姫就任の
パーティーだ。
思う存分楽しめ!」

その言葉にみんなからは喜びの歓声

「「「うおおおおお!!!」」」

「「「やった〜!!!」」」

さっきまでの少しピリッとした

雰囲気なんて全くなくて

いつもの無邪気な笑顔を見渡して

心の中で呟いた

≪みんな、お疲れ様!
無事に終えられて、こうして
みんなと笑顔でいれる私はすっごく
幸せ者だよ。
ありがとう!≫

ここは本当に温かい場所だね…

みんなが温かいからここも

笑顔で溢れる素敵な場所なんだと

思うんだ

これからもず〜っとみんなで

笑い合っていけたらいいなぁ…


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じわりじわりと忍び寄る影が

すぐ近くに迫ってきている事も

あんな事が起きるなんてことも

私もみんなもこの時は

思いもしなかった…






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