暴走族の天使〜紡ぐ言葉を聴きたくて〜
詩side

錬と一緒に掲示板を確認するため

戻ってきたのはいいんだけど

まだ沢山の男の子達で賑わっていて

私が一緒だと揉みくちゃにされるからと

錬が見に行ってくれてます!

ワクワクする〜!

同じクラスだと嬉しいな!

あっ、戻ってきた!!

≪錬、どうだった?≫

ノートを見せるとニカッと笑って

ダブルピースする錬

これはもしや…

「詩!俺ら同じクラスだぞ!」

ウソ!!やったー!!

錬の手を掴んでぴょんぴょん跳んで

嬉しさを表現した私は次の瞬間…

わわわわっ!?

錬の片腕に抱っこされちゃいました!

満面の笑みを浮かべて手の平を向けられて

首を傾げて考えてみる

ん〜?なんだろう?

「詩、ハイタッチ!ほら!!」

そういう意味か〜!

ーパチンッ

2人で掲示板から離れて喜びの

ハイタッチを交わした

それから少し立って興奮が取れてきた頃

錬はお友達と合流するらしく

ここで待たないと駄目なんだって!

「詩、俺の仲間がまだ来ねぇから
待たねぇといけねぇんだよな〜
どうする?先行くか、体育館」

う〜ん…どうしようかな?

首を傾げながら錬に抱っこされたまま
考えてみる

手の平にこぶしをポンッ!

そうだ!女の子が居ないか探してみたいから、先に行っておこうかな?

≪錬あのね、女の子のお友達も探してみたいから先に行ってもいい?≫

ノートを見せるとニカッと笑って

降ろしてくれた

「了解っ!見つかるといいな!」

錬を見上げてうん!っと大きく頷いた

「気をつけて行けよ、また後でな?」

コクコク頷いて手を振り、錬とは

ここで1度バイバイする

ニカッと笑って大手を振ってくれる

錬に笑みがこぼれる

その場を後にして体育館へゴー!

さてさて、女の子はいないかなぁ?

ここ喜仙高校は男の子は学ランで

女の子はセーラー服なの

セーラー服…セーラー服…

あ!居た!

私はその子に向かって猛ダッシュ〜

袖をクイクイッと引っ張ってみる

そして、ゆっくり振り返ったのは

胸元まである黒髪に二重の黒目

モデルさんみたいな手足の長い

とても綺麗な女の子!

クールビューティーってやつかな?

女の子にしては少し背が高いから

やっぱりここでも私は見上げなきゃ

いけないんだけど…

私にはない色を持つ彼女から

目が離せない

ジーッと見つめていると

聞こえてきたのは綺麗なソプラノの声

「あなた誰?私に何か用事?」

いきなり袖をクイクイした上に

ジーッと見つめ過ぎたからか

すごく警戒して、眉間に皺が寄っちゃてる!

急いでノートに書いて彼女の視線に

掲げてみせた

≪初めまして、私は星川詩です。
女の子のお友達が欲しくて!
駄目でしょうか?≫

ジッと見つめて読んでくれてる彼女は

とっても良い人だ

読み終わったのか視線を私に移して

数秒…

「私でいいの?言っとくけど何でもズバズバ言うから気分悪く感じちゃうかもよ?」

無表情なのに黒目は揺れてる

もしかしたら、そう言うところを

誰かに言われたか聞いたかして

私もそうなるって思ってるのかもしれない

だけどそれってすごくカッコイイなって

思うの

周りに流されず自分の気持ちを

素直に伝えるのってすごく勇気が

必要だから…

それに突然現れた私の話をきちんと

聞いてくれるのは優しいからだよ

彼女とお友達になりたい

≪もちろんだよ!
私あなたとお友達になりたい!
私のことは、うたって呼んでね。
あなたの名前を聞いてもいい?≫

笑顔でノートを見せると少し笑ってくれたのが、すごく嬉しい!

「私の名前は立川律(たちかわりつ)よ。
律って呼んで。
こちらこそよろしく、詩。
それからひとつ聞いてもいい?」

さっきの悲しそうな無表情じゃない

優しい微笑みが本当の律なんだね

コクコク頷いた

「気を悪くしないで…
もしかして、詩…話せないの?」

さっきの錬みたいに眉が八の字に

なっちゃってる

私のこと心配して気にかけてくれてるんだ

優しいんだね、律は…

でもね?私話せなくても全然平気なの

だって気持ちを表すのは口だけじゃなくて、身体全部で伝えられるから

嬉しいも悲しいも辛いも怒るのも

表情や身体を使って表現出来るもん!

≪うん、喋れないよ。
でもね、大変だとか苦痛とかは感じない!
だって話せなくても、それ以外の方法で
気持ちを伝えることは出来るから!

でも…私の相手になってくれる人は
大変かもしれないかな≫

笑顔でノートを見せる

ノートに書いたのは私の本音だけど

少しだけ不安かな…

だって会話って相手ありきで

成立するでしょう?

だけど私は話せないから

みんなと同じリズムやテンポについていけないから、大変かもしれない…

知らず顔を下げてしまってることに

気付かなかった

ーその時

頭の上に優しい手の平が触れて

ゆっくり視線を上げた先に

律の優しい眼差しと目が合った

「大変なんて思わないわよ、私は。
どんな風に会話するかは自由よ。
だから詩がそんな風に感じる事も思うのも
全く必要ない。
詩は詩のままでいいの、それが1番大切」

私は私のままでいい…

それが1番大切…

園長先生がくれた言葉と同じだ

そうだね、律

私は私のままでいいんだよね?

うんと笑顔で頷いた

それから式が始まるまで律と沢山

お話をしてクラスが同じだってことが

分かって私はまたぴょんぴょん跳んじゃって

律はクスクス笑ったの

だから私も笑顔が溢れる

式が始まって校長先生のお話が長くて

なんだかつまんなくて

律とノートでお話して過ごした

なんだか内緒話みたいでワクワクしちゃった

2人だけの秘密みたい!

お話に夢中で気が付けば式は終わってて

ほとんどの人が居ない体育館で2人

私と律は顔を見合わせて笑ったの

体育館から教室への移動中に

もう1人、錬という男の子のお友達が

出来た事や同じクラスだということも

話した

私と律と錬のクラスは1ー3組

そういえば錬は仲間を待つって

言ってたけど会えたのかな〜?

そんな事をふと思い出しながら

律と2人、教室へ足を踏み入れた

今日からここが私が過ごす場所

とっても楽しみ!
















< 5 / 69 >

この作品をシェア

pagetop