暴走族の天使〜紡ぐ言葉を聴きたくて〜
詩side

教室に1歩足を踏み入れれば

見覚えのある金髪モヒカンの錬が見えた

もう教室に来てたんだ〜

机にお尻を乗せてお友達らしき人と

楽しそうにお話してる

そこに向かって猛ダッシュ〜

錬の身体にダイブして抱きついた

「うわぁっ!詩!?」

大きな目を白黒させてびっくりしてる!

お友達も口を開けたまま固まっちゃってる

へへへ〜面白い!!

抱きついたまま笑顔で見上げると

錬の頬がほんのり赤い…どうして?

首を傾げて考えたけど分からないな〜

あっ、暑いのか!

パッと離れてノートに書いて見せた

≪錬、ごめんね?暑かった?
顔が赤い…大丈夫?≫

背伸びして錬の頬に手を添えると

あれれ?更に赤くなっちゃった!

不思議に思って首を傾げてると

そっと手を降ろされた

「詩、大丈夫だから!
俺はめちゃくちゃ元気だから…な?」

なんか分からないけど

錬が大丈夫だって言うからコクッと頷いた

あ、そういえば錬のお仲間さん?には

あれから会えたのかな?

≪錬、待ち合わせしてるって言ってた
お仲間さん?には会えたの?≫

それを読んだ錬は無言で指を指した

その先を辿っていくと…

さっきお話してた、これまた大きな男の子

錬と同じくらいかな?

綺麗な艶のある茶色い髪は緩くウェーブしてて、左側だけ綺麗に編み込んでる

瞳も髪と同じ茶色

銀縁の眼鏡がとってもお似合いだ

初めましてを込めて笑顔でお辞儀した

「詩、コイツは桜川奏(さくらがわそう)。
さっき話した俺の仲間だ」

「初めまして、詩ちゃん。
僕は桜川奏、奏って呼んでね」

すごく柔らかな声だ

高くも低くもないすごく不思議な声…

≪初めまして、星川詩です。
錬がお友達になってくれました!
よろしくね、奏≫

ノートを見せると

柔らかく笑ってくれた

≪奏もお友達になってくれる?≫

もう一言書き込んで見せると

「もちろんだよ、よろしくね」

そう言って笑ってくれたから

嬉しくて奏の手を握りながら

ぴょんぴょん跳んじゃう!

突然の行動に奏はキョトンとしてたけど

私は嬉しくて飛び跳ねてたから

気付かなかったの

そんな私を錬も律も奏も

優しく見つめていたなんて…

それからHRまでみんなでワイワイして

過ごしてたんだけど

突然扉が開いてみんなの視線はその先へ…

そこには大きな男の子と

その子よりは小さな男の子2人が

こっちに向かって突進してきた!!

「奏も錬も先に行くなんてヒドイよ!
僕達あちこち探したんだよ!」

小さな男の子は頬を膨らませて

ぷりぷり怒ってる

すごく可愛い男の子だな〜

栗色のフワフワした髪と同じ色の目

右耳だけに沢山のピアス

錬や奏よりは小さいけど、それでも

私よりは大きい背丈の男の子は

私の存在に気付いたのか

さっきまでぷりぷり怒ってたのに

笑顔で両手を広げて抱きついてきた

わわわわ!?く、苦しぃ〜!!

腕をタップすると落ち着いたのか

舌をペロリと出して腕を離してくれた

「初めまして〜僕は藤吉奈留(ふじよしなる)
錬と奏の仲間だよ!よろしくね〜!
僕のことは奈留って呼んでね!」

天使のような笑顔なのに力は強くて

両手を掴んでブンブンするから

身体が揺れる〜!

「おいっ、奈留!ストップ!!
詩が壊れちまうよっ!!」

奈留の頭にチョップした錬は

私を後ろから抱き寄せて

奈留から引き離してくれた

頭上から聞こえる優しく気遣う声は

もちろん、錬だ

「詩、大丈夫か?」

腕の中から上を見上げて笑顔で頷いた

視線を戻せば…

ん?なになに??

奏も奈留ももう1人の男の子も

律までもお顔がほんのり赤い

みんな本当に大丈夫?

心配になってもう一度錬を見上げると

あれれ?錬も赤い

ムムム…これは大変な事態だよ!

きっと風邪の引き始めだ!

ノートを手に取ってカキカキカキ…

≪みんな大丈夫?風邪の引き始めは
気を付けないと!!≫

みんなに見えるように掲げてみせると

全員から大きな溜め息を頂きました

なんで溜め息??

風邪引きさんじゃないってこと?

よく分からない〜!!

あっ、自己紹介の最中だったよね

≪初めまして、星川詩です!
詩って呼んでね!
私も奈留って呼ぶから!
お友達になってくれる?≫

奈留に近付いて見せた

「うん!もちろんだよ!
こちらこそよろしくね〜詩ちゃん!」

さっきと同じように手を握って

握手して気が付いた

さっきはブンブンされてて分からなかったけど…

奈留、震えてる?

もしかして女の子が苦手?

そう考えれば今のこの状況に

ピッタリ当てはまるんだもん

律と目も合わせなければ

距離もすごく不自然…というか

もう1人の男の子を壁にして

拒絶してるみたい

私にも無理して触れて笑って抱きついて

まるで怖い事を必死に隠して

強く見せようとしてる

何が原因かは今の私には分からないけど

無理する必要も強く見せようとする必要も

私にはないってことを知っていて欲しいな

だって私と奈留はお友達だもん

誰にだって得手不得手がある

それを声に出す人もいれば

隠そうと胸にしまう人もいる

奈留は後者…

だったら、これは誰にも言わないで

2人だけの秘密にしよう

辛くなった時に寄り添える拠り所が

あったほうが良いでしょう?

こっそりとノートに書いて

奈留を引いて廊下に連れ出した

≪奈留、女の子が苦手なんだよね?
それなのにいきなり手を握っちゃって
ごめんね。
私と奈留はお友達…だから
絶対に私の前では無理しないでね!
誰にも内緒、2人だけの秘密!≫

笑顔でノートを見せると

大きく目を見開いて

私を見つめる奈留に私は笑顔で頷いた

「…ありがとう、詩ちゃん」

柔らかい笑顔を見せる奈留に

さっきまでの強張りは見えない

その笑顔が奈留の本当の笑顔なんだね

とっても素敵!

焦らずゆっくり進もうね




















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