暴走族の天使〜紡ぐ言葉を聴きたくて〜
絵留side
詩ちゃんと孤児院で出会ってから3年経った頃…
表情を浮かべられるようになってきた事に
私達は涙が出るほど嬉しかったなぁ〜
だけど、12歳を迎えた頃から少しずつ
また表情が無くなっていく事に気付いて
それとなく話を聞いたのを覚えてる
詩ちゃんから聞いた話は子供特有の
素直さと真っ直ぐさが出た
残酷な言葉たちで
声も出せなくて感情も表情も失った
詩ちゃんと仲良くなりたがる子は居なくても
それでも私達が居るから、いいんだって
頬を少し緩めた詩ちゃんは
その時の事をゆっくりノートに書き綴ってくれた
内容はそう……
クラスでも1人孤立していたけど
ある日突然、1人の男の子に声を掛けられたらしい
その子は同じクラスで詩ちゃんとは正反対の
表情が豊かでクラスでも人気のある子で
声を掛けてくれた時は凄い驚いたって言ってた
その日を境にその子、一色晴翔(いっしきはると)くんは
常に詩ちゃんに話し掛けて傍に居るようになった
声も出せない、感情も上手く出せない自分と居ても
つまらないんじゃないか?
そう打ち明けたら、一緒に居たくて傍に居るから
つまらなくなんてないと……
好きだから、守りたいからと言ってくれた
その言葉を聞いて初めてのお友達が出来たと
凄く嬉しかったって少し笑みを浮かべてた
こんな自分でも受け入れてくれる人が
此処にも居るんだって……
だけど、親しくなってしばらくした頃
図書室で本を借りて帰る途中に
一色くんを見かけた詩ちゃんは
当時、2人でよく読んでいた本の新刊が出た事を
教えてあげたくて走り寄ろうとした
だけど、一色くんに近付く1人の女の子が現れて
邪魔しちゃいけないと少しだけ離れて歩いていた
その時、聞こえた言葉に足が動かなくなった
「晴翔〜、最近星川さんとよく一緒にいるけど
もしかして好きとかじゃないよね?
彼女は私だし、好きなのも傍に居るのも守るのも
私が1番で最優先だよね?」
一色くんにそう問いかけた女の子に一色くんは
笑顔で、こう答えたらしい
「星川さん?別にただのクラスメイトで
好きでも嫌いでもないよ。
ただクラスで1人孤立してるから構ってあげてるだけ
だから安心していいよ。
彼女は美憂だし、好きなのも傍に居るのも守るのも
美憂が最優先に決まってるだろ?
あの子は孤児院育ちだから可哀想なだけで
好きなんて感情は全くないし」
「やだ、晴翔〜!星川さん可哀想!
でもそうだよね〜!
あんな見た目だし、声も出せないし
無表情で何考えてるか分かんない子なんて
本気になる訳ないよね!」
「当たり前だろ?
あんな人形みたいなの、居ても居なくても
俺には関係ないよ。
仕方なく一緒に居てやってるだけ!
俺、優しいから!はは!」
2人の会話を聞いて怒りよりなにより
ただ悲しかったって……
自分はやっぱり誰からも必要とされてなくて
同情と哀れみの対象であるだけなんだって……
そして同時に、そんな自分と過ごさせてしまって
申し訳ない気持ちになったらしい
だから、それから詩ちゃんは一色くんに
悟られないように少しずつ距離を置いて
今はまたクラスで1人で過ごしてる
「その話を聞いた時は腹わたがグツグツよっ!
なのに、当の詩ちゃんは悲しそうに笑うだけで
その2人を責めるどころか、ただ……
こんな自分に付き合ってくれただけで
楽しかったって言うのよ!?
彼の大切な人との時間を奪ってしまって
申し訳ない気持ちだって……
本当に詩ちゃんは心底優しすぎるのよ……
人に対して過度な位に心を向けられる
慈悲と加護が溢れるマリア様みたいにね」
「私もその話を聞いた瞬間目の前が
真っ赤に染まったもの……
悔しくて悲しくて心が壊れてしまいそうだった。
だけど、自分には私達が居るから
それだけで幸せで、それ以上望むのは
もったいないって笑うんだもの……
自分がどんな扱いを受けても平気だけど
自分を大切にしてくれる人が同じ目に遭ったら
平気では居られないって言ってたわ」
涼風の言う通りなのよね
自分よりも周りに心を傾ける強い信念みたいな
強い心を持ってる
だけど本当は心の何処かで、誰よりも
愛されることを望んでいる気がしてならない
「そいつのせいで、詩は傷付いたんだな……
けど、それを聞いて納得したわ。
あいつが人を見た目だけで判断しねぇで
人の内側を見てくれる。
自分よりも周りに優しくて温かい心を持って
接する事が出来るのは、そういう経験があるから」
金髪モヒカン君が、忌々しく舌打ちをした
「そうよ……
人は傷付いた分だけ人に優しくなれるの。
詩ちゃんは、その中でも群を抜いて1番よ。
本当に心に沢山の傷を抱えているのに
いつも笑顔であろうとするの……
だけど今回は……
その心もポッキリ折れたみたいだけど」
私は当事者である彼をジッと見据えた
あなたは、これをどう対処するつもり?
1度開いた傷を塞ぐのは簡単な事じゃないわ
ただのかすり傷ではない、身体の内側……
心の傷は慎重にならないと塞がるどころか
大きく開いて閉じられないかもしれない
「あなたは今回の件をどう受け止めて
対処するのかなぁ?
1人の人間、いえ……男として。
詩ちゃんが本当に好きなら
しっかりと覚悟を持って向き合いなさい。
本当に手放したくないのなら。
詩ちゃんを本当の意味で受け止められないなら
今すぐ、此処を去ることをお勧めするわ」
私の言葉に、此処に居る全員が彼に目を向けた
そして私の言葉を受けて顔を上げた彼の瞳は
強い光を放ち、覚悟を決めているように見えた
詩ちゃんと孤児院で出会ってから3年経った頃…
表情を浮かべられるようになってきた事に
私達は涙が出るほど嬉しかったなぁ〜
だけど、12歳を迎えた頃から少しずつ
また表情が無くなっていく事に気付いて
それとなく話を聞いたのを覚えてる
詩ちゃんから聞いた話は子供特有の
素直さと真っ直ぐさが出た
残酷な言葉たちで
声も出せなくて感情も表情も失った
詩ちゃんと仲良くなりたがる子は居なくても
それでも私達が居るから、いいんだって
頬を少し緩めた詩ちゃんは
その時の事をゆっくりノートに書き綴ってくれた
内容はそう……
クラスでも1人孤立していたけど
ある日突然、1人の男の子に声を掛けられたらしい
その子は同じクラスで詩ちゃんとは正反対の
表情が豊かでクラスでも人気のある子で
声を掛けてくれた時は凄い驚いたって言ってた
その日を境にその子、一色晴翔(いっしきはると)くんは
常に詩ちゃんに話し掛けて傍に居るようになった
声も出せない、感情も上手く出せない自分と居ても
つまらないんじゃないか?
そう打ち明けたら、一緒に居たくて傍に居るから
つまらなくなんてないと……
好きだから、守りたいからと言ってくれた
その言葉を聞いて初めてのお友達が出来たと
凄く嬉しかったって少し笑みを浮かべてた
こんな自分でも受け入れてくれる人が
此処にも居るんだって……
だけど、親しくなってしばらくした頃
図書室で本を借りて帰る途中に
一色くんを見かけた詩ちゃんは
当時、2人でよく読んでいた本の新刊が出た事を
教えてあげたくて走り寄ろうとした
だけど、一色くんに近付く1人の女の子が現れて
邪魔しちゃいけないと少しだけ離れて歩いていた
その時、聞こえた言葉に足が動かなくなった
「晴翔〜、最近星川さんとよく一緒にいるけど
もしかして好きとかじゃないよね?
彼女は私だし、好きなのも傍に居るのも守るのも
私が1番で最優先だよね?」
一色くんにそう問いかけた女の子に一色くんは
笑顔で、こう答えたらしい
「星川さん?別にただのクラスメイトで
好きでも嫌いでもないよ。
ただクラスで1人孤立してるから構ってあげてるだけ
だから安心していいよ。
彼女は美憂だし、好きなのも傍に居るのも守るのも
美憂が最優先に決まってるだろ?
あの子は孤児院育ちだから可哀想なだけで
好きなんて感情は全くないし」
「やだ、晴翔〜!星川さん可哀想!
でもそうだよね〜!
あんな見た目だし、声も出せないし
無表情で何考えてるか分かんない子なんて
本気になる訳ないよね!」
「当たり前だろ?
あんな人形みたいなの、居ても居なくても
俺には関係ないよ。
仕方なく一緒に居てやってるだけ!
俺、優しいから!はは!」
2人の会話を聞いて怒りよりなにより
ただ悲しかったって……
自分はやっぱり誰からも必要とされてなくて
同情と哀れみの対象であるだけなんだって……
そして同時に、そんな自分と過ごさせてしまって
申し訳ない気持ちになったらしい
だから、それから詩ちゃんは一色くんに
悟られないように少しずつ距離を置いて
今はまたクラスで1人で過ごしてる
「その話を聞いた時は腹わたがグツグツよっ!
なのに、当の詩ちゃんは悲しそうに笑うだけで
その2人を責めるどころか、ただ……
こんな自分に付き合ってくれただけで
楽しかったって言うのよ!?
彼の大切な人との時間を奪ってしまって
申し訳ない気持ちだって……
本当に詩ちゃんは心底優しすぎるのよ……
人に対して過度な位に心を向けられる
慈悲と加護が溢れるマリア様みたいにね」
「私もその話を聞いた瞬間目の前が
真っ赤に染まったもの……
悔しくて悲しくて心が壊れてしまいそうだった。
だけど、自分には私達が居るから
それだけで幸せで、それ以上望むのは
もったいないって笑うんだもの……
自分がどんな扱いを受けても平気だけど
自分を大切にしてくれる人が同じ目に遭ったら
平気では居られないって言ってたわ」
涼風の言う通りなのよね
自分よりも周りに心を傾ける強い信念みたいな
強い心を持ってる
だけど本当は心の何処かで、誰よりも
愛されることを望んでいる気がしてならない
「そいつのせいで、詩は傷付いたんだな……
けど、それを聞いて納得したわ。
あいつが人を見た目だけで判断しねぇで
人の内側を見てくれる。
自分よりも周りに優しくて温かい心を持って
接する事が出来るのは、そういう経験があるから」
金髪モヒカン君が、忌々しく舌打ちをした
「そうよ……
人は傷付いた分だけ人に優しくなれるの。
詩ちゃんは、その中でも群を抜いて1番よ。
本当に心に沢山の傷を抱えているのに
いつも笑顔であろうとするの……
だけど今回は……
その心もポッキリ折れたみたいだけど」
私は当事者である彼をジッと見据えた
あなたは、これをどう対処するつもり?
1度開いた傷を塞ぐのは簡単な事じゃないわ
ただのかすり傷ではない、身体の内側……
心の傷は慎重にならないと塞がるどころか
大きく開いて閉じられないかもしれない
「あなたは今回の件をどう受け止めて
対処するのかなぁ?
1人の人間、いえ……男として。
詩ちゃんが本当に好きなら
しっかりと覚悟を持って向き合いなさい。
本当に手放したくないのなら。
詩ちゃんを本当の意味で受け止められないなら
今すぐ、此処を去ることをお勧めするわ」
私の言葉に、此処に居る全員が彼に目を向けた
そして私の言葉を受けて顔を上げた彼の瞳は
強い光を放ち、覚悟を決めているように見えた