暴走族の天使〜紡ぐ言葉を聴きたくて〜
奈留side

僕は藤吉奈留(ふじよしなる)っていうの!

全国ナンバー1の暴走族"星竜"の幹部なんだ

今日から喜仙高校の1年になる

僕の他に同じく幹部の2人と

副総長、総長もここに入学するんだよ!

しかも先代の計らいでみんな同じクラス

すっごく楽しみ〜

式には出ずに集まったみんなで

星竜の学校内での溜まり場である

屋上でお話中なんだ

なのに…

錬と奏は僕が気付かぬうちに

どっかに行っちゃった〜!

本当自由人なんだからっ!

あちこち探してやっと見つけたと

思ったら金髪の小さな女の子と

楽しそうに笑ってる

今すぐ錬に向かって怒りに行きたいけど

僕は過去のある事がキッカケで

女の子が苦手なんだよね…

でも暴走族の幹部が女の子が苦手なんて

情けなくて言えないし

そんな姿見せたくない

だから今日も精一杯強がるんだ!

「奏も錬も先に行くなんてヒドイよ!
僕達あちこち探したんだよ!」

女の子からの視線を拒絶するように

錬と奏に突進していく

下からの視線に仕方なく目を向けたら

そこに居たのは金髪碧眼の女の子で

みんなの中では小さい175センチの

僕よりもさらに低い背丈

大きな目をキョトンとさせて

パチパチと瞬きをする姿に

苦手なんて忘れて抱きついちゃった

僕の腕にタップされて

しまった!って思った

「初めまして〜僕は藤吉奈留(ふじよしなる)
錬と奏の仲間だよ!よろしくね〜!
僕のことは奈留って呼んでね!」

と笑って自己紹介したんだけど

冷静になったら少しだけ指が震えた

その時、錬からのチョップを受けて

震えも治ったんだけど…

錬の腕の中にすっぽり収まる女の子は

ニコニコ笑顔で可愛いなって思った

だけど同時に胸の奥が少しギュッと

したのはなんなんだろう?

訳の分からない状態に落ち着かない…

錬から僕らへ向けて笑顔を見せた瞬間

身体中が熱に侵されたみたいに熱くて

しかも、ここにいる他のみんなも

もう1人の女の子でさえも

顔が真っ赤になってるのに

当の本人は首をコテンと傾げて

≪みんな大丈夫?風邪の引き始めは
気を付けないと!!≫

と、なんとも天然な発言を力説

僕たちは全員大きく溜め息をついた

可愛い子は何をしても可愛いって

言うけど、本当にその通りだよね!

うんうん、なんて考えてたら…

突然自己紹介が始まった!?

≪初めまして、星川詩です!
詩って呼んでね!
私も奈留って呼ぶから!
お友達になってくれる?≫

…なんてキラキラした目で見つめられ

僕の心臓はばくばくだ!

内心動揺してるけど

顔にも態度にも出さない

「うん!もちろんだよ!
こちらこそよろしくね〜詩ちゃん!」

…けど、次の瞬間

詩ちゃんに手を握られて

身体がピシリと固まった

女の子が苦手と分かっているみんなは

声には出してないけど

心配という名の視線を送って来てる

そして、詩ちゃんからも…

もしかして気付かれた?

でも今までみんな以外に

気付かれたことは1度もない

それくらい僕の態度は完璧なのに

突然ノートに何かを書き始めて

僕の手を引いて廊下に出る詩ちゃん

そして笑顔でノートを見せてきた

≪奈留、女の子が苦手なんだよね?
それなのにいきなり手を握っちゃって
ごめんね。
私と奈留はお友達…だから
絶対に私の前では無理しないでね!
誰にも内緒、2人だけの秘密!≫

内容にもびっくりしたけど

そこに綴られている文字は

とても温かくて優しいんだ

そしてすごく嬉しい…

強くあろうとする為の嘘の笑顔じゃない

みんなの前でしか見せない本当の笑顔を

詩ちゃんに向けて…

「…ありがとう、詩ちゃん」

詩ちゃんが一緒なら進めるかもしれない











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