今が思い出にならないために。
朝、スマホのアラームが部屋に鳴り響く。
起き上がるとかなり疲れがたまっているのか、全身が重たい。

ここ何日も朝から晩まで実験していたからだろう。
私は特に急いで実験をする必要はなかったが、あえてそうしていた。
彼のことをなるべく思い出さないように保つためだ。
心にぽっかりと空いた穴を自覚すると、辛い。

私は今日も実験をするべく、軽く朝食を食べて支度をし、大学へと向かった。


研究室に入り、実験器具を準備する。しかし、あまりに疲労感が強かったので、少し休むことにした。

椅子に座り、机に乗った実験ノートに突っ伏した。






━━━━━

ぼんやりと遠くから音が聞こえてくる…それは次第にはっきり鮮明になった。機械音が一定の速度で鳴っているのが聞こえる。

意識はある。しかし、身体中が地面に引きずり込まれそうなほどずーんと重たく、金縛りのように全身が動かない。

何かあたたかいものが右手を包み込む。誰かの息づかいが微かに聞こえる…


━━━━━


私はあわててばっと起き上がった。どうやら、あのまま眠ってしまったようだ。
それにしても、リアルな夢だった。全身の疲労感がこれを作り上げたのだろう。そうとは理解出来ても、なんだか不気味に感じた。


私はリフレッシュするために、大学をでて外の空気を吸うことにした。
< 15 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop