今が思い出にならないために。
彼と数分何気ない会話をして、そろそろ別れようかというところだった。

「なんか、話し込んじゃってごめん。もしかしてこれからどこか行く用事だった?」

『いやいや、全然大丈夫だよ!一人でカフェに行こうとしてただけだし!』

「そうなんだ…」

彼は少し考えてからこう言った。

「もし良かったら俺もそこ、行っていい?…あと少ししたら地元に帰っちゃうし。」

思わぬリクエストだった。どちらかといえば人見知りの私でも、彼とは何となく波長があう気がする。

それに、もっと彼のことを知りたい。だから一緒にカフェに行くことにした。

ただ、地元に帰るという一言が気になった。
彼と私が同じ学年ということは知っているけれど、住む場所までは知らない。

『さっき、地元に帰るって言ってたけど、地元ってどこなの?』

「あー、北斗。」

『えっ!?そんな遠くだったの?』

特急電車に乗ってもここからは何時間もかかる場所だ。

「まぁな。こっちにはばあちゃん家があって、夏とかはしばらく泊まってるんだ。」

思わぬ情報を知ることになったが、この街に来ているうちにもっと一緒にいれますように、と心の中で願った。
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