二年越しのありがとうを、キミに。
あの日も毎朝恒例の満員電車に揺られ、悶々とした気持ちを抱えながら通学していた。


電車がホームに滑り込む。乗客の流れに乗って降りると数歩先にいる大きなバッグパックを背負った背の高い外国人の姿が目にとまった。


私と同じぐらいか少し年上かもしれない。


彼はしきりに首を左右に振って落ち着かない様子であたりを見回している。


でも、誰も彼を気に留めない。

彼の曇った表情から何か困っていることは容易に想像できた。


きっとあと数十秒経てば、誰かが彼に声をかけるだろう。


高校生の私よりも英語力のある大人が話を聞いた方が彼にとってもいいはずだ。


冷静に考えればわかるのに、あの時の私の頭の中にそんな選択肢はなかった。
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