あのね、ほんとはね。
ほんとはね、言いたいよ。

「じゃあ、行ってくる。」

もういく時間か。

もう悠くんは永遠に私の隣に帰ってこないんだ。

なら、もういいよね。

17年間の思い。伝えはしないよ。

これから喋りかけもしない。
これから近づきもしない。

だからね、1つだけ。
1つだけワガママ聞いて欲しい。

「…悠くん。待って」

ゆっくりとこちらを向く悠くん。
久しぶりに目があった。

「何。柚奈…?」

…久しぶりすぎるよ。

私を瞳に写してくれるのも、私の名前を呼んでくれるのも。

君から私を写してくれるなんて思ってもみなかった。

君から私の名前が出てくるなんて思ってもみなかった。

もうそれだけで満足しちゃいそうになる。

けど、それじゃダメなんだ。

本当に最後だから…

「あのね、告白終わった後。ちゃんとここに帰ってきてね。
……頑張ってね。」

絶対帰ってきて。これは本当の気持ち。

最後の言葉は少し強がってしまったけど。

でも、君は優しいからきっと…

「わかった。帰ってくるよ。」

ほらね。

またどうしようもない好きが積もっていく。
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