あのね、ほんとはね。

「…ただいま」

「…おかえり」

声がした方に体を向ける。、

そこには少し泣きそうになった悠くんが私の目の前に立っていた。

お互いが黙って、沈黙が続く。

少し経ってから悠くんが無理やり作った笑顔で言った。

「…フラれちゃったや。」

何を言えばいいのかわからなかった。

ただ、君がそうやって呟くから、私まで悲しくなるんだ。

ね、そんな顔しないでよ。
ね、笑って。

「…悠くん」

「柚奈…。お願い。ワガママ1個聞いて。」

…うん。いいよ。なんでも聞くよ。

小さい頃もこんなことを言い合った気がする。

私のワガママはいつもいつも違っていたけれど。

悠くんのワガママはいつも同じ。

「はい。いいよ。悠くん…」

私は両手を広げて悠くんを待つ。

そうすれば、悠くんは私に少しずつ近づいてきてそっと私の背中に手を回してぎゅっと包み込んでくれる。

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