Smile  Again  〜本当の気持ち〜
翌日の昼休み。俺は、神と金谷に無理矢理、首根っこを掴むように、屋上まで、引っ張って来られた。


「お前、どういうつもりだ?練習は無断で休むわ、俺達の電話には出ないわ、挙げ句の果てに、朝から逃げ回りやがって。」


「別に逃げ回ってたわけじゃねぇよ、面倒くさかっただけだ。どうせ、言われることはわかってるからな。」


「レギュラー外されたのが、そんなに不満か?」


「ああ、不満だね。道原と俺と、どっちがキャッチャーとして上か、誰が見たって明らかだろうよ。」


「確かに明らかだ。何が気に食わないのか知らんが、プレーにも練習にも、まるで気持ちの入ってない今のお前に比べたら、道原の方が、数段上だろう。」


神の遠慮のない言葉が、胸に突き刺さる。確かにその通り、自分でもわかってるのに、今の俺は素直になれない。


「だったら、そんなバカバカしいところになんか、用はねぇよ。ほっといてくれ。」


「お前、ガキか?」


「何だと!」


一触即発の俺達の様子に、今まで黙っていた金谷が、慌てて割って入る。


「2人ともよせよ。なぁツカ、お前一体どうしちゃったんだよ?副キャプテン断った時から、おかしいなと思ってたんだ。まさか、キャプテンになれなかったからって・・・。」


「見損なうなよ。こんなデクの棒より、俺の方がマシだとは思うが、別にキャプテンなんて、やりたい奴がやりゃいいんだ。」


「じゃ、何だよ。あんなに野球に対して、ひたむきだったお前がどうして?」


必死になって問い掛ける金谷を冷然と見ながら、俺は答えた。


「白鳥さんをぶっ潰しといて、のほほんと平気な顔してる連中と一緒に、必死になって、野球なんかできるかよ。」


俺のその言葉に、神と金谷は、息を呑んだ。


「俺は死に急いだ白鳥さん本人にも、腹が立ってるし、それを止め切れなかった監督や松本さん達にも腹が立ってる。だけど・・・一番腹が立ってるのは、自分自身に対してだ。」


「塚原・・・。」


「白鳥さんの怪我にずっと気づけなかった自分自身にな。俺は、俺達は白鳥徹という、ひょっとしたら日本球界を背負って立ったかもしれない投手を見殺しにしたんだ、違うか?」


「しかし・・・。」


「それが、白鳥さんの意思だったって言うんだろ?なら、何故白鳥さんはいなくなっちまったんだ?やっぱりあの人は後悔してるんだよ、それが当たり前だよ。だから、俺達が心を鬼にして、止めなくちゃいけなかったんだ!」


「・・・。」


「誰も責任取らないんだったら、俺が取る。もうこんな後悔と自己嫌悪を抱えて、野球なんかしたくねぇ。」


「ちょ、ちょっと待てよ、塚原。」


「退部届は明日にでも持って行く。監督には、そう伝えておいてくれ。」


そう言うと、慌てる2人を振り切るように、俺は駆け出した。
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