Smile  Again  〜本当の気持ち〜
俺は今、新しいクラスとなった3-Aの教室で、ボヤッと座っている。そんな俺に教室に入って来た沖田が、声を掛けて来た。


「塚原、初めてクラスが同じになったな。改めてよろしく。」


「おぅ、こちらこそ。やっぱり俺達は白鳥さんが帰って来た時のお守り役ということか?」


「お前もそう思うか。」


そう言うと俺達は笑い合う。あれから半年、白鳥さんは休学したまま、留年という形になり、俺達と同じクラスになった。担任はゴーさん、先輩の女房役だった俺と控え投手で、一の子分みたいな存在だった沖田がクラスメイトになったのは、いかにも先輩への配慮が感じられた。


だけど今、俺がボンヤリと考えていたのは、実はいつ帰って来るかもわからない先輩のことではなく、久しぶりにクラスメイトになったあいつのことだった。


いつもように、水木と仲良く教室にやって来たあいつは、チラッと俺の方に視線を向けたような気がしたけど、それが気のせいかと思うくらい、何事もなかったかのように、自分の席についてしまった。


そう、俺達の今の関係は、あいつが言ってた通り「元幼なじみ」。そんな俺達の間に、クラスメイトになった途端に会話が復活するなんて、あり得ない。


それは俺が望んだこと、いや正確に言えば、望んでたわけじゃないけど、俺の意固地な性格と勇気の無さが、今日の俺達の関係をもたらしたことは、既に見てもらって来た通りだ。


気が付けば、俺達も高3。自分のこれからの進む道を決めなくてはならない、岐路を迎える時期になった。


今は高3生の8割以上が、四年制大学を目指す時代だが、俺の場合は野球を続けるか否かということも、進路と密接な関連が出てくる。


そんな重要な時期に俺は、あいつと、由夏とクラスメイトになった。
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