Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「よぉし、今日はこれまでだ。」


監督の声が響いて、この日の練習が終了する。後片づけをしてると、沖田が近づいて来た。


「なぁ、なんか食って帰ろうぜ。ハンバ-ガ-なんかどうだ?」


「どうしたんだ、急に。」


「いや、バッテリ-はコミュニケーションがやっぱり大切だからさ。おごるからさ、どう?」


やけに下手に出る沖田に首を捻ってると、尾崎が笑いながら言う。


「ツカ、付き合ってやれよ。恋女房に振られて、相当落ち込んでたぜ、コイツ。」


「そうそう。俺じゃモノ足りないみたいだぜ、この繊細なエ-スさんは。」


道原もニヤニヤしながら、続ける。なるほど、俺がさっき冷たくあしらったから、気にしてたんだ。


「わかったよ、でも別におごってくんなくてもいいよ。今はデ-トだって割り勘の時代、夫婦は平等と行こうぜ。」


なんて言ったけど、本当はさっきあしらった理由が理由だったから、さすがにゴチになるのは気が引けた。


「そりゃありがたい。さ、行きましょう。」


「お前は太鼓持ちか。」


冗談半分なのはわかってるが、こういう気の優しいというか弱いところが、沖田がピッチャ-としてもう1つ殻を破れないところ。友達として、付き合う分にはいい奴なんだけど、ピッチャ-っていうのは、もう少し唯我独尊的なところがあったほうが大成するんじゃないかな。


白鳥さんなんて、まさにそうだったし、俺もピッチャ-の時は、俺よりいいピッチャ-なんかいるかくらいに思ってた。橘に期待はしてるけど、現状ウチのエ-スはやっぱり沖田なんだから、コイツにしっかりしてもらわないと。


「お疲れ様でした〜。」


片付けが終わり、そこかしこで挨拶が飛び交い、俺達はグラウンドを後にする。


「真弓、今日は宿題大丈夫か?昨日みたいに、10時過ぎてから、急に教えてくれって、押しかけられても困るぞ。」


「だから昨日はご飯食べた後、ウトウトしちゃったんだって。今日はちゃんと、夕飯済んだら、すぐ行くから。」


「って、結局今日も来るわけ?」


「いいじゃん、だってわかんないんだから。」


仁村と白石が、そんなことを言い合いながら、並んで歩いて行く。あの2人の家は、隣同士みたいで、年頃になった今でも、当たり前のように行き来してるらしい。


松本さんも白鳥さんも、こう言っちゃなんだが、勉強の方はからっきしだったけど、その点仁村は、学年でも5本の指に入る秀才。文武両道と言うわけで、大したもんだ。


俺と由夏は・・・いい勝負だな。どっちも勉強はお世辞にも得意とは言えない。それでもあいつもさすがに3年になって、塾にも通って、勉強頑張ってるらしい。


俺は・・・野球で大学入れてもらえるように、頑張るしかなさそうだ。


それにしても、仁村達を見てると、やっぱり由夏のことを考えちゃうよな・・・。
< 109 / 217 >

この作品をシェア

pagetop