Smile  Again  〜本当の気持ち〜
初戦は危なげない勝利。去年なら、初戦なんて勝って当然くらいに思ったかもしれないけど、今の俺達は、勝って勢いをつけることが大切。とにかく県大会は先が長い、戦いは始まったばかりだ。


次の試合では、ついに我が校の秘密兵器、橘剣がそのベールを脱いだ。3番ライトで先発出場して、チームには既に十分な貢献をしてる剣だが、大量リードもあって、監督がピッチャーとしてのデビューを決断。


とにかく練習試合を含めても、実戦は初登板。どうなることかと思ったが、ハートはなかなか強い奴だから、物おじせず、2イニングを無難に投げきった。


あのシッチャカメッチャカだったコントロールを思えば、よくぞここまで、辿り着いたものだ。


「剣、ナイスピッチング。」


「ありがとうございます。ま、こんなもんでしょう。」


生意気な口ぶりの剣。沖田にせめて、剣の半分の度胸がありゃなぁ。もっとも剣に沖田のコントロールがあれば、とも言えるんだから、世の中ままならないということか。


それはともかく、剣の速球は他校にかなりインパクトを与えたはず。それが、これ以降の試合に活きてくればいいんだが。


その後も、我々は勝ち進んだが、昨年のような絶対的な強さではない。トーナメントが進むにつれ、苦しい場面が増えて来たが、それは覚悟の上のこと。


そんな中で、切り札として活躍してるのが剣だ。監督は去年の白鳥さんの役回り、抑えとして奴を使っている。短いイニングで、奴の速球を打ち返すのはなかなか相手にとっちゃ、骨だろう。


打線も昨年の迫力には及ばないにしても、仁村を中心に頑張っている。剣ー仁村ー神と続くクリーンアップは県下では、上位の迫力で、剣のハナがますます高くなって来てるのは、ちょっと気に食わんな。


そして、べスト4まで進んだ我が校は、いよいよ準決勝の日を迎えることとなった。
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