Smile Again 〜本当の気持ち〜
夕日を背にして立って、微笑んで、俺を見つめている由夏。その姿は息を呑むくらいきれいだった。
なんで、ここにいるんだ?そう聞くつもりだったが、なぜか声にならない。俺達と違い、応援の生徒は球場で、現地解散のはずなのに。
「忘れ物しちゃってさ。寄り道してから来たから、こんな時間になっちゃった。」
すると、その俺の疑問が伝わったかのように、照れ笑いを浮かべながら、由夏は答える。そんな由夏を前に、俺は立ち尽くすだけだ。
「試合、お疲れ様。」
固まっているかのような俺を、気にする様子もなく、由夏は話し続ける。
「強かったね、湘南学園。でも聡志達は力の限り、戦った。見てて、それがよくわかったよ。負けたことは悔しいだろうし、私も悔しい。でも私は感動してる、聡志はもちろん、沖田くんも神くんも、同級生達が最後まで全力でプレ-してた姿に。」
「・・・。」
「それに貴重なものも見られたし。聡志のホ-ムラン、明日吹雪にでもならなきゃいいけど。」
そう言って、いたずらっぽく笑う由夏。
バサッ。次の瞬間、今度は由夏が固まる番だった。
「聡志・・・。」
俺は、由夏を抱きしめていた。何が起こったのか理解できずにいる由夏に、俺は夢中で呼びかけていた。
「由夏、ごめん。だけど今は、今だけでいい。このままでいさせてくれ。このままで・・・。」
その俺の言葉に、由夏の身体の力が抜けたのがわかった。そんなあいつの髪から香る甘い薫りが、俺の鼻をくすぐる。
由夏、俺に会いに、さっきの言葉を俺に伝える為に、わざわざ遠回りして、学校まで戻って来てくれたんだよな。
由夏の身体の温もり、早鐘のような鼓動が伝わってくる。俺の由夏を抱き寄せる力は、強くなる一方。セーブなんて、出来ない。だけど、由夏は抵抗もせずに俺に身を任せてくれてる。
由夏、俺はお前が好きだ。だけど、お前を振り向かせる自信がなくて、お前に自分の気持ちを伝える勇気がなくて、お前に何度も嫌な思いをさせて来た。
その意気地なしが、自分の思いをお前に伝える勇気を得る為に、もう1度、甲子園を目指した。だけど、その夢も今日、雲散霧消してしまった。本当に悔しいけど、これが現実なんだ。
俺はようやく由夏の身体を離した。離したくなかったけど、いつまでもこうしている資格は俺にはない。
「聡志・・・。」
一瞬、目が合ったけど、すぐに顔を真っ赤にして俯く由夏。その仕種の可憐さに、俺の心臓は、はちきれそうになる。やっぱり、言おう!
「帰ろうか。」
だけど、実際に自分の口から出て来た言葉に、俺は失望した。そうじゃねぇだろ、そう自分にツッコんでた俺の耳に、追い討ちをかけるような言葉が聞こえて来た。
「ごめん・・・先に帰っててくれる?私・・・。」
俺の顔を見ずに由夏は言う。そうか、そうだよな・・・。
「わかった。由夏、ごめんな。」
そう言うのが、精一杯で、俺は由夏を置いて駆け出した。いや、逃げ出したというべきだろう。そうだよ、俺は結局、いつも逃げて来たんだ、こうやって・・・。
なんで、ここにいるんだ?そう聞くつもりだったが、なぜか声にならない。俺達と違い、応援の生徒は球場で、現地解散のはずなのに。
「忘れ物しちゃってさ。寄り道してから来たから、こんな時間になっちゃった。」
すると、その俺の疑問が伝わったかのように、照れ笑いを浮かべながら、由夏は答える。そんな由夏を前に、俺は立ち尽くすだけだ。
「試合、お疲れ様。」
固まっているかのような俺を、気にする様子もなく、由夏は話し続ける。
「強かったね、湘南学園。でも聡志達は力の限り、戦った。見てて、それがよくわかったよ。負けたことは悔しいだろうし、私も悔しい。でも私は感動してる、聡志はもちろん、沖田くんも神くんも、同級生達が最後まで全力でプレ-してた姿に。」
「・・・。」
「それに貴重なものも見られたし。聡志のホ-ムラン、明日吹雪にでもならなきゃいいけど。」
そう言って、いたずらっぽく笑う由夏。
バサッ。次の瞬間、今度は由夏が固まる番だった。
「聡志・・・。」
俺は、由夏を抱きしめていた。何が起こったのか理解できずにいる由夏に、俺は夢中で呼びかけていた。
「由夏、ごめん。だけど今は、今だけでいい。このままでいさせてくれ。このままで・・・。」
その俺の言葉に、由夏の身体の力が抜けたのがわかった。そんなあいつの髪から香る甘い薫りが、俺の鼻をくすぐる。
由夏、俺に会いに、さっきの言葉を俺に伝える為に、わざわざ遠回りして、学校まで戻って来てくれたんだよな。
由夏の身体の温もり、早鐘のような鼓動が伝わってくる。俺の由夏を抱き寄せる力は、強くなる一方。セーブなんて、出来ない。だけど、由夏は抵抗もせずに俺に身を任せてくれてる。
由夏、俺はお前が好きだ。だけど、お前を振り向かせる自信がなくて、お前に自分の気持ちを伝える勇気がなくて、お前に何度も嫌な思いをさせて来た。
その意気地なしが、自分の思いをお前に伝える勇気を得る為に、もう1度、甲子園を目指した。だけど、その夢も今日、雲散霧消してしまった。本当に悔しいけど、これが現実なんだ。
俺はようやく由夏の身体を離した。離したくなかったけど、いつまでもこうしている資格は俺にはない。
「聡志・・・。」
一瞬、目が合ったけど、すぐに顔を真っ赤にして俯く由夏。その仕種の可憐さに、俺の心臓は、はちきれそうになる。やっぱり、言おう!
「帰ろうか。」
だけど、実際に自分の口から出て来た言葉に、俺は失望した。そうじゃねぇだろ、そう自分にツッコんでた俺の耳に、追い討ちをかけるような言葉が聞こえて来た。
「ごめん・・・先に帰っててくれる?私・・・。」
俺の顔を見ずに由夏は言う。そうか、そうだよな・・・。
「わかった。由夏、ごめんな。」
そう言うのが、精一杯で、俺は由夏を置いて駆け出した。いや、逃げ出したというべきだろう。そうだよ、俺は結局、いつも逃げて来たんだ、こうやって・・・。