Smile  Again  〜本当の気持ち〜
その瞬間、私の頭の中は真っ白になってしまった。


抱きしめられてる、聡志に・・・。どうしたの?聡志。なんで私を・・・予想もしなかった出来事、戸惑う私の耳に、聡志の切なそうな声が。


「由夏、ごめん。だけど今は、今だけでいい。このままでいさせてくれ。このままで・・・。」


その声が聞こえると、私の身体の力がなぜか抜けて行く。そして逆に、私を抱きしめる聡志の力はどんどん強くなって来る。


痛いよ、聡志。もう離して・・・って思ってないよ、私。なんで?


私、どうしちゃったんだろう。夕方になったとは言え、こんな暑い最中になにやってるんだろう。聡志なんかに抱きしめられて、そのまま黙って、身を任せちゃってるなんて・・・。


どのくらい、そうしていたんだろう。ゆっくりと聡志の身体が離れて行くの感じた私は、いつの間にか、つぶっていた瞳をハッと開く。


「聡志・・・。」


ふっと見上げると、聡志と目があってしまい、私は慌てて目を伏せてしまう。自分でもわかるくらいに、顔を真っ赤にして。


「帰ろうか。」


上から聡志の声が降って来る。でも私は、うつむいたまま、かぶりを振った。


「ごめん・・・先に帰っててくれる?私・・・。」


一緒に帰るのが、嫌だったわけじゃない。でも、帰り道、どんな顔してればいいの?何、話したらいいの?私には、わからなかった。


「わかった。由夏、ごめんな。」


そう言い残すと、聡志は走って行ってしまった。


(行っちゃった・・・。)


聡志、何でそんな逃げるように行っちゃうの?なんでごめんなの?


自分のことも、聡志のことも、とにかくわからなくて、さっきまでの聡志みたいに、私はマウンドの上でしばし、立ち尽くしていた。
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