Smile  Again  〜本当の気持ち〜
始業式の日、俺は2つの理由で緊張していた。


1つは数日前、練習中にゴーさんに呼ばれた俺は、「あの人」が、いよいよ2学期から帰って来ることを知らされた。


「お前も自分のことで、大変だろうが、よろしく頼む。」


ゴーさんに頭を下げられた俺は、すぐに沖田に連絡を取り、あの人がクラスにうまく溶け込めるようにして行こうと話し合った。


そして、もう1つは「あいつ」と久しぶりに顔を合わせるからだった。


俺なんかに抱きしめられて、迷惑だったろう。そう思って謝ったら、あいつの凄まじい怒りを買った。


「聡志は忘れて欲しいんだ?」


あいつはそう言った。ということはあいつはあのことを「忘れたくなかった」ということになる。それってつまり・・・なぁ、お前が好きなのは松本省吾だろ?俺なんか眼中になかったんじゃないのかよ・・・。


戸惑いながらも、練習が終わった後、あいつの家に行った。今度ばかりは土下座してでも、キチンと謝ろう、そう決心していた。


あいつは家にいた、だけど会ってはくれなかった。たった一言


「顔も見たくない。」


という言葉をあいつのおふくろさんに託して。


そして迎えた今日。あいつは不本意だろうがクラスが同じである以上、俺の顔は見ざるを得ない。が、果たして教室に入って来たあいつは、俺のことなんか、見向きもしない。


遅れてやって来た水木と、何事もなかったかのようにしゃべってるが、あいつから出ているオーラが違う。


別に1学期も特にあいつと喋ってたわけじゃない。だから周りは何も気付かないだろうが、1学期のあいつは俺に対して「知らん顔」。それに対して現在は「無視」いやもっとはっきり言えば「拒絶」。この違い、わかってもらえるだろうか・・・。


覚悟はしていたけど、やはり相当凹んだ。


「なぁ、先輩もう来てるのかな?」


沖田が近づいて来て、何か話し掛けて来てるのに、まるで上の空。


「おい塚原、聞いてるのか?」


「おぅ、き、聞いてるよ・・・ってなに?」


「なんだ、お前。夏休みボケか?」


「ま、まぁな・・・。」


さっぱり要領を得ない会話に、沖田は呆れ顔。


「時間になりました。講堂に移動します。」


クラス委員のその言葉が、この気まずい雰囲気から救ってくれた。
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