Smile  Again  〜本当の気持ち〜
ちょっと、そこのみなさん、失笑しないでよ。まぁ気持ちはわからないでもないけど。


でも、俺は本気で嬉しかったんだ。家に帰って、そのことを夢中になって、母さんに報告したのを、覚えてる。


だから由夏と一緒にいるのは、当たり前だと思ってた。だって将来結婚するんだぜ。


幼稚園を卒園して、小学校に入学して、2年生になり、3年生になり、俺達はその年の夏休みも由夏の家と、合同でキャンプに行ったり、プールに一緒に行ったり、花火をしたりとたくさんの思い出を作って、2学期を迎えた。


そんなある日、俺はクラスの悪ガキ数人に囲まれた。


「お前、いつも岩武と一緒だな。」


「女とばっか、遊んでるって、変な奴。」


「いい年して、恥ずかしくないのかよ。この、おとこおんな。」


今から思えば、愚にもつかない、言いがかり。しかし、当時の俺には、結構屈辱的な言葉だった。


「俺は男だ、おとこおんなじゃない。」


「へぇ、じゃ証拠を見せてみろよ。」


「証拠って?」


「俺達の前で、岩武をイジメてみろよ。」


全く、見事なほどの小学生の会話。愛しのフィアンセをイジメるなんて、とんでもないが、しかし俺は引っ込みがつかなくなっていた。


仕方なく、俺は「一時的」に、由夏を突き放すことにした。一緒に登校するのを断り、もう話しかけるなと言ってしまった。


もちろん、本気じゃない。ほとぼりが覚めたら、頭を下げて、仲直りするつもりだった。


ところが、それを真に受けたのか、由夏が本当に俺に距離を置くようになった。


もう話しかけるなって言った時も、特にショックを受けた様子もなく、黙って俺を見ていただけ。泣き叫ぶんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていた俺が、拍子抜けするくらいだった。 


つまらない挑発に乗って、突き放すようなことを言ったのは、俺の方なのに、由夏の反応にショックを受けて、傷ついたのは、結局自分という無様な顛末。


こうして、由夏ともう一度話すきっかけも、仲直りする自信も失った俺は、無為な時間を過ごしたまま、父さんの突然の転勤による引っ越しで、最後の砦だった「ご近所さん」という立場も失い、由夏と離れ離れになった。


俺の初恋は終わった・・・。
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