Smile  Again  〜本当の気持ち〜
新学期に入ってからも、毎日ではなかったけど、俺は部に顔を出している。後輩達からすれば、うざったいと思われてるかもしれないが、野球を続けることが決まった以上、練習はおろそかにできないし、俺が経験したことを少しでも、あいつらに伝えてやりたいとも思う。


だけど、入試であまりみっともない点は取れないし、多少は遊びたいし、今までのような練習三昧の日々というわけでもない。


そしてもう1つ、俺の使命だと思っていた白鳥さんのお守りは、何のことはない。一部の女子達が競ってやってくれている。


始業式の翌日、いつものように呑気に登校した俺は、突然何人かの女子に取り囲まれ、目を白黒させられた。まさか突然のモテ期が・・・なんてはずはなかったが、何事かと思えば、みんな白鳥さんのことを聞いて来る。同じ境遇に立たされた沖田と顔を見合わせて苦笑いだ。


それにしても、普段何の付き合いもない俺に、ためらいもなく寄って来て、聞きたいことをズバズバ聞いて来る女子のパワ-には、正直感心させられた。この3年間、好きな女に何も言えず、うじうじしてるだけの俺には、うらやましいくらいだ。


頑張れよ、純粋に応援してやりたいけど、難敵だぜ、白鳥さんは。あんなにキャ-キャ-言われてたのに、あの人は恋愛にとんと興味を示さない。あっち系なのかと、疑いたくもなるが、そういうわけでもない。


あのガ-ドの固さは、ちょっと理解に苦しむ。なにか過去の恋愛でトラウマでもあるのかとも思うが、そういう話をあの人と話す雰囲気にもならないから、結局わからない。


同期の連中と白鳥さんと昼飯を食った時も


「俺は自分の新しい夢を叶える為に、まずは大学に行きたい。今は女にうつつを抜かしてる暇はない。」


なんて言い放ってたけど、その言葉が嘘であることに、間もなく気付いた。白鳥さんには好きな子が出来た。同級生の水木悠だ。


水木・・・由夏の大親友であり、先輩は知らないだろうが、何を隠そう先輩の大ファン。俺が見る限り、学年有数の優良物件である水木が、誰の手にも落ちないのは、ひとえに水木の白鳥さんへの一途な気持ちと自分の魅力に気がついてない超鈍感力の賜物。その点、由夏にそっくりだ。


先輩がその気になれば、明日にでも手に入れられるはずだが、果たしてどうなるか。先輩の恋愛力、お手並み拝見と行きましょうか。
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