Smile  Again  〜本当の気持ち〜
文化祭の準備が始まった。過去2年は練習が忙しくて、ノータッチだったが、今年はクラスの出し物に参加出来る。クレープ作りか、俺に出来るのか?


「お前にクレープなんて、作れるわけないだろ。当日は教室の入口で、大声出して、呼び込みでもやってろ。」


「そう言うお前こそ、作れるのかよ。」


「ああいう料理は、繊細なピッチャー向きなんだよ。」


自分が出来ないことを棚に上げて、なんだが、あんなの料理のうちに入るのか?そんなバカ話をしなから、沖田と割り当てられた作業をしていていると、加瀬が近づいて来た。


「なぁ、お前達の先輩、なんとかならんか?」


苦り切った顔の加瀬の視線の先には、通称「取り巻き女子」と楽しそうに話している白鳥さんの姿が。


「なんとかって?」


「いくらなんでも酷すぎないか?あれ。」


まぁ確かに作業なんか、そっちのけ、あっちのけでおしゃべりに勤しんでるあのグループは目障りなのは確か。


「まぁな。」


「まぁな、じゃなくて、白鳥さんに注意してくれよ。」


「そんなの、ガキじゃあるまいし、ほっとけよ。」


白鳥さんのあんな姿は俺も見たくない。何考えてるんだって、腹もたつけど、しかしこの加瀬もおかしくないか?このクラスが、文化祭に向けて、イマイチ団結出来ないのは、ひとえに、このクラス実行委員のリーダーシップの欠如の為だと、俺は思っている。


沖田は白鳥さんにモノなんか言えないし、俺は言ってやってもいいけど、そんなことお前が言うべきことだろ、って思ったから、相手にしなかった。


すると加瀬は、今度は水木の所へ行って、同じようなことを言っている。隣の由夏が、呆れ顔でたしなめてる、当たり前だと、俺も呆れていると、意外なことが起こった。


なんと水木がおもむろに立ち上がると、由夏が止める暇もなく、先輩と取り巻き女子に向かって


「やる気がないなら帰って下さい。」


更に


「私、先輩のこと、見損ないました!」


と言うと、教室を飛び出していってしまった。


「悠!」


由夏が慌てて、追い掛けて行く。そんな2人をやや呆然と見送っていた先輩も、おもむろに立ち上がると出口に向かう。驚いた沖田が


「ちょっと先輩!」


と立ちふさがるように止めるけど、先輩は


「帰る。」


と一言言い残すと、沖田を押しのけて出て行ってしまう。


「先輩、いいんですか?」


と呼び止める俺の言葉に、振り向きもしないで。取り巻き女子達が後に続き、そんな状況に加瀬も長谷川もただオロオロしてるばかり。


「長谷川、ここ頼んだぞ。加瀬、行くぞ。」


たまりかねて、俺は2人にそう言うと教室を駆け出す。


「俺も行く!」


そう言って、沖田も付いて来た。
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