Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「なぁ、塚原。」


「なんだよ。」


「お前、岩武さんと親しいのか?」


「親しいように見えるか?」


「見えないよ。でもお互い、名前呼びじゃん。」


「確かにあいつを苗字で呼んだことは、ねぇな。」


「えっ?」


「幼なじみって奴か、いわゆる。昔、近所に住んでて、幼稚園や小学校に一緒に通ってた。」


「じゃ親しいんじゃないか。」


「お前、今自分で言ったろ、俺と由夏は親しそうに見えないって。」


「ああ・・・。」


「幼なじみなら、仁村と白石のように仲良しが当たり前っていう固定観念は捨てた方がいいな。気の合わない幼なじみ同士がいたって不思議じゃないだろ。」


「まぁ、そりゃそうだけど・・・。」


いろいろあった1日、文化祭の準備が終わってから、俺は沖田と連れ立って、先輩の見舞いに行った。その途中で、沖田が由夏とのことを聞いて来た。まぁ、ずっと聞きたくて、うずうずしてるのは、感じてはいたけど。


でもお生憎さま、お前が想像たくましくしてるような仲じゃねぇんだよ、俺達は、残念ながら。いや、残念なのは俺だけか・・・。


先輩の家には、何度かお邪魔しているが、おやじさんが大会社の社長だけあって、大邸宅だ。呼び鈴を押すと、先輩のおふくろさんが出て来てくれたが、先輩の熱は下がらず、今も寝ているとのこと。せっかく来た下さったのに、ごめんなさいねと丁重に頭を下げられて、かえって恐縮してしまう。


「では、お大事にとお伝え下さい。」


失礼しようと頭を下げると


「ソウくん。」


と後ろから、沖田を呼ぶ声がする。見ると、先輩の妹の白鳥唯が帰宅して来た。


「お帰り、唯ちゃんも文化祭の準備?」


「うん、ウチのクラス、駄菓子屋さんやるんだ。ソウくんも絶対来てよね。」


「ああ。必ず行くよ。」


先輩の妹で、可愛い子なんだけど、年下のくせに妙に馴れ馴れしいのが苦手で、俺は敬遠してるんだが、沖田は「ソウくん」なんて呼ばれて、満更でもないらしい。


「お兄ちゃんのお見舞いに来てくれたの?」


「うん、熱まだ下がんないんじゃ、心配だね。」


「お兄ちゃんもクラスに馴染めなくって、ストレスたまってたんだよ。それに、文化祭の準備、さぼってるとか言われたんでしょ。可哀想。」


「まぁ、それは誤解だったって、わかったから大丈夫。」


「でも許せないよ。お兄ちゃんがそんなことするわけないのに、そんな誹謗中傷するなんてさ。」


プリプリ怒っている唯を適当になだめて、俺たちは引き上げたんだけど、まさか翌日、あんな騒動になるとはなぁ・・・。
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