Smile  Again  〜本当の気持ち〜
文化祭の準備をサボってたのは、先輩を隠れ蓑にしてたいわゆる「取り巻き女子」の連中。何かあったようだが、最高学年らしく、自分達で解決して見せてくれとゴ-さんに言われた俺達は、話し合い、自分達の気持ちをぶつけあって、少しずつ結束への道を歩み始めていた。


ところが思わぬ事態が勃発したのは、先輩がダウンしてから2日目の2時間目のあとの休み時間。


「どういうつもりなの?お兄ちゃんに何の恨みがあるのよ!」


いきなり教室に響いた怒声に驚いて、そっちの方を見ると、白鳥唯が鬼の形相で、水木に詰め寄ってる。横には由夏もいるけど、さしもの由夏も、何が起こったのか理解できず、ポカンとしているだけ。


(マジかよ。)


俺が慌てて駆け寄ろうとする前に、沖田がすっ飛んで行った。


「ちょっと、唯ちゃん。」


「この人でしょ?お兄ちゃんが文化祭の準備サボってるとか、いちゃもん付けて、その上、ズル休みしてるとか言ってるの。私絶対に許さないんだから!」


「わかった、わかったから、とりあえずこっちに来てよ。」


興奮している唯を、沖田は懸命に教室の外に連れ出して行く。教室に、何とも言えない空気が流れる中、俺はあっけにとられたままの由夏と水木に近づいた。


「まいったな、すっかり誤解してる。」


「聡志、何者なのよ?あの子。」


「白鳥唯、先輩の妹だ。」


呆れ顔で聞いてきた由夏に、俺はため息交じりに答えた。


結局、沖田が戻ってきたのは、4時間目が始まる直前で、とりあえずなだめたけど、また来るかもしれないなんて言うから、昼休みは屋上に退避することにする。1年生に怒鳴り込まれて、3年生が逃げ回るのもどうかと思うが、ここは大人の判断で、騒ぎを大きくしない方が賢明だろう。


屋上に向かったのは、俺と由夏と水木、それになぜか取り巻き女子の1人、桜井加奈。


「どうも、一昨日のことが、尾ひれ葉ひれ付いて、いろいろ校内に広まってるらしいのよ。先輩にサボってるって言ったのは、確かに悠だけど、仮病を疑ったのは私だから。」


と口火を切った由夏に


「怖いね、噂って。」


と相槌を打つ桜井。


「それにしたって、例えどんなに腹が立ったとしても、1年の女子が1人で、3年の教室に怒鳴り込んで来ねぇだろ。」


と俺。そのあともいろいろなことを話したが、ふと気付けば、なんの違和感もなく、由夏と一緒の時間を過ごしていた。なんか、不思議な気分だった。
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