Smile  Again  〜本当の気持ち〜
いろいろあったけど、その後、文化祭の準備は順調に進んだ。雨降って地固まる、という言葉がピッタリの雰囲気で、ウチのクラスは結束を強めて行った。


そして迎えた文化祭初日。ウチのクラスのクレープ屋さんはお蔭様で大繁盛。厨房担当の私は、朝から大忙しなんだけど、横にいる親友は、なんか変。


「ねぇ悠、悠ってば。」


「へっ?」


「何ボヤッとしてるの?また注文だよ。」


「あっ、ゴメン。」


私に言われて、作り始めるけど


「悠、焦げてるよ。」


「えっ、あ、ゴメン。」


と心ここにあらず。


「どうしたの?身体の具合でも悪いの?」


心配した長谷川さんに聞かれて


「ううん、大丈夫。ごめんなさい。」


と言うけど、明らかに様子がおかしい。


更に今日は屋上でお弁当というわけにはいかず、一緒に行った学食で昼食をほとんど残すという、普段の食いしん坊の悠からは考えられない事態が起き、私は本当に心配になる。


だけど、その理由は次の日に明らかになった。午前中ローテーションから外れた私達は、学祭を一緒に回ったんだけど、その途中、私は何気なく聞いた。


「ねぇ、今日の花火、どこで見る?」


ウチの学祭のフィナーレを飾る花火大会。過去2年、悠と一緒に見た私は、当然のごとく、今年も一緒に見るつもりだったんだけど、なぜか口ごもる悠。そんな悠の姿に、私はハタと気付いた。


「あぁ、まさか悠!」


「うん、実は先輩に誘ってもらってる。話があるって。」


顔を真っ赤にして白状する悠。


「なんだ〜、だから昨日から様子がおかしかったんだ。水臭いな、そんな重大なことを私に隠してるなんてさ。」


「ゴメン、なんか恥ずかしくて・・・。」


本当は隠し事の罰として、くすぐり1分間の刑に処したいくらいだけど、顔を真っ赤にして恥ずかしがってる純情さに免じて許してやろう。


「そうかぁ、とうとう悠にも春が来たね。先輩が戻って来てから、1ヶ月ちょっとで見事ハートをゲットしたね。羨ましい、おめでとう。」


「で、でも先輩の話って、何のことかまだわからないし・・・。」


「本気で言ってるの?後夜祭の花火に話があるって誘っておいて、告白以外の何の用事があるのよ。」


「ちょっと由夏、声が大きいって。」


相変わらず、心配性の悠を前に、私のテンションはMAXになっていた。
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