Smile  Again  〜本当の気持ち〜
時は瞬く間に過ぎていった。午後4時になって、外部公開は終了。ウチのクラスの模擬店はお蔭様で大盛況に終わり、私達は誰彼となくハイタッチを交わして、最後の学祭の成功を祝い合った。


そして、後片付けに入った私達だけど、6時が近づくと、一旦その手を止める。学祭のフィナーレを飾る吹奏楽部の演奏と、そのあとの大花火大会が始まるからだ。


私達にとって、最後の後夜祭。みんな思い思いの場所で、思い思いの人と過ごそうと、1人また1人と教室を離れて行く。


悠も白鳥先輩の待つグラウンドへ向かって行った。一緒に花火が見られなくて、寂しくないと言ったら、ウソになるけど、でも悠の一途な慕いがとうとう、叶おうとしている。それは自分のことのように、本当に嬉しい。


悠、本当に良かったね、幸せになってね!


そう言えば、夕方、ウチのクラスに木本先輩が顔を出してくれた。白鳥先輩の様子を見に来たそうだけど、帰り際、私に


「岩武さん、ううん由夏ちゃんって呼ばせてもらおうかな。とっても美味しかったよ。じゃ、またね。」


と声を掛けられて、びっくりした。先輩とは1度も話したこともなかったのに、なんで私のことを知ってるのかと思ったら、悠に聞いたところによると、先輩は、私達のことを野球部に誘おうとしてたんだって。


恋敵?に誘われて、入部してたら、私どうなってたかな?お熱いところを間近に見せつけられて、激しく嫉妬しちゃったか、それともいっそ、スッパリ諦めがついたのかな・・・。


それに、私が野球部に入らなかったのは、先輩達のこともあったけど、聡志とうまくやってく自信がなかったからだから。どちらにしても、いいマネージャーになれたとは、とても思えないな・・・。


それにしても、聡志の心配は取り越し苦労だった。もう悠と先輩は大丈夫だよ。


突然、一時的でいいから、仲直りしようなんて、言い出して、すっかり驚かされたけど、その後、あいつは私だけじゃなく、他のクラスメイトとも男女問わず、結構話すようになったし、文化祭の準備も積極的に取り組んでた。


沖田くんは、急に人当たりのよくなった聡志に驚いてたけど、私に言わせれば、これが本当の聡志の姿なんだよ。


あいつの中で、何かが変わったんだよね、きっと。それが何かは、私にはわからないし、今更なんだよ、とも思ってしまう気持ちもあるけど、やっぱり嬉しいよ。


でも、私達はあくまで限定仲直りだから、悠達のことが心配なくなったら、また元に戻っちゃうってこと?それとも・・・。


なんてことを考えているうちに、吹奏楽部の演奏はラストの曲に入った。これが終わるといよいよ花火が上がる。気がつけば、教室にはほとんど人影がなくなってる。私、1人で花火見る羽目になっちゃった・・・。


聡志、君は今、どこにいるの?最後の花火、1人で見るくらいなら、「最低」なあいつでも一緒にいてくれれば、まだよかったのに・・・。


そんな寂しい気持ちのまま、空を見上げた私の目に、何かが写る。


(あれ?)


まさかと思いながら、よく目を凝らすと、それは間違いなく


「雨!」


予報にもなかった雨が突然・・・。これじゃ、花火どころじゃない、各所に散っていた生徒達が大わらわで、校舎に駆け込んでる様子が見える。


(悠達、うまくいったかな?)


ちょっと心配になった。
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