Smile  Again  〜本当の気持ち〜
そんなことがあったのが、関係あるのかないのか、次の日、学校に行ってみると、水木の様子がおかしい。先輩が何を話し掛けても、まるっきり無視。あんな水木は見たことない。突然のことで、先輩もどうしていいのか、困り切った様子だ。


昼休み、ゆっくり話が出来るのを待ちかねたように、由夏達は水木を事情聴取の為に、拉致するように屋上に連れ出す。そっちは任せて、俺は水木に冷たくされて、すっかりたそがれている先輩をグラウンドに誘った。


「水木を怒らせちゃいましたね。」


「えっ?」


「先輩、水木は先輩の何ですか?先輩は水木の何なんですか?」


いきなり俺にたたみ掛けられて、先輩は目を白黒させている。


「って言われて、水木は返事に困ってましたよ。」


文化祭の少し前だったか、俺はやはりこうやって、先輩と話をしたことがあった。もう半年で卒業という時期に、1つ年下の連中の中に放り込まれて、さしもの白鳥さんも戸惑いを隠せない日々。


そんな中、先輩は水木と出会った。そして一目で心を奪われた。その水木はと言えば、入学してから、一途に先輩を慕い続けて来た。出会うべくして出会った、やっと出会えた2人、俺にはそうとしか思えなかった。


恋のキュ-ピットなんて、柄じゃない。でも俺は2人にはうまく行って欲しかった、好きな女と再会できたのに、素直になれなくて、そいつとの仲をこじらせて、なかなか前に進めないでいる俺の二の舞を先輩に演じてほしくなかった。


だから俺はその時言ったんだ。


「水木にはきっと心に決めた人がいるんですよ。」


って。それは白鳥さん、あなたなんですよっていう思いを込めて。何でそんなことがわかるんだって、聞かれて


「俺はキャッチャ-、キャッチャ-は観察力に優れてなきゃ務まらないいんですよ。」


なんて恰好つけたこと言っちまった。まさか俺の好きな奴の横で、水木はいつもあなたのことを応援してたんですよ、とは言えないしな。


でも、俺は今でもすげぇピッチャ-だったと思ってるけど、こうやって恋に受験に悩んでる姿を見ると、やっぱり普通の高校生なんだな、白鳥さんも。


「告白されてましたよ、アイツ。」


俺の言葉に露骨に動揺する先輩。


「安心してるんでしょ。もう水木は自分のモノだって。先輩は確かにモテます、羨ましい限りですよ。でもモテるのは先輩だけじゃない、水木を見てるのは先輩だけじゃないんですよ。」


「塚原・・・。」


「水木のこと、好きなんでしょ?水木が先輩のこと、どう見てるか、もうわかってるはずですよね?」



「・・・。」



「だったらもう、いい加減にはっきりしてやったらどうです?このままじゃ先輩に憧れてる子たちも水木を見てる連中も、みんな可哀想でしょ。いや誰よりも水木が。」


尊敬する先輩に、ちょっと偉そうなことを言って、気持ちよくなった俺は


「油断してると、やられますよ。」


と決め台詞を吐いて、歩き出した。


「塚原、お前も水木を見てる1人なのか?」


そんな俺に、不安そうに聞いて来る先輩。


「いえ、俺が見てるのは別の奴。でもそいつがいつも水木と一緒にいやがるから、どうしても水木のことも視界に入って来る、そういうことです。だからご心配なく。」


人間、のぼせ上がっちゃいけないよな。先輩を安心させようと言ったこの言葉が、実は重大発言であることに、俺は全く気が付かなかったんだから・・・。
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