Smile Again 〜本当の気持ち〜
その時、講堂は大歓声に包まれた。司会の山上先生の紹介で、松本先輩が壇上に姿を現した。一斉にたかれる取材陣のフラッシュを背にして、緊張のピ-クの中、先輩を待ち構えていた私は、精一杯の笑顔を向けると
「先輩、お帰りなさい。お待ちしてました。」
と考え抜いた言葉と共に、花束を渡した。
「ありがとう、岩武さん。」
カチカチの私に優しい笑顔を送ってくれた先輩は、こう言って、花束を受け取った。
(えっ?今、先輩確かに、岩武さんって・・・。)
まさか先輩が名前を呼んでくれるなんて・・・私は天にも昇る思いだったが、ふと我に返ると、慌てて舞台の袖に引っ込んだ。
本当は、そのまま席に戻らなければいけなかったんだけど、私は袖から、ずっと先輩の姿を見つめながら、話を聞いた。
さすがの先輩も、500人を超える後輩やお世話になった教職員を前に、緊張を隠せなかったし、その話も決して上手ではなかった。でも
「夢は必ず叶うわけじゃないけど、夢を持ち、それを追い求めることは尊いことだと思う。」
「僕たちは1人じゃない。家族がいて、先生たちがいて、そして大切な仲間達がいる。これからも僕はそんな仲間達と一緒に、夢を追いかけ続けて行きたい。」
と切々と、私達に語り掛けてくれた。そして話が終わり、先輩が壇上から一礼すると、構内はまた割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
私も精一杯の拍手を先輩に送った。
私達はこの後、一旦教室に戻ったあと解散。悠と帰宅の途に着いた私は、とにかく興奮していた。
「やっぱり松本先輩はカッコイイ~。」
「よかったね、由夏。そう言えば、花束渡した時、先輩、由夏に何か言ってたよね。なんて言われたの?」
「『ありがとう、岩武さん。』って言われたの。チョ~最高!」
大はしゃぎの私をニコニコしながら見守ってくれる悠。本当にいい子、大好き。だから言わなくっちゃ。
「ねぇ、悠。」
「うん?」
「私、やっぱり立候補してよかった。」
「松本先輩に名前、呼ばれたんだもんね。」
うん、でもそれだけじゃないんだよ。
「ずっと後悔してたんだ。」
「何を?」
「松本先輩に何も言わなかったこと。」
「えっ?」
驚いたように、私の顔を見る悠。
「コクって、どうにかなったとは思ってないし、木本先輩に逆立ちしたって、勝てなかったのもわかってる。でもさ、松本先輩と2年間も同じ学校に通って、ずっと憧れてて。なのに、ただの1度も話すことも出来なくて、私の事になんか、気付きもしないで、松本先輩は卒業しちゃった。コクって、あっさり振られたって、それでも松本先輩に少なくても、私という存在を知らしめることはできた。それすらないって、あまりにも悔しかった、悲しかった。そう思ったのは、先輩が卒業しちゃってからなんだけどね・・・。」
私はここで1つため息をついてしまう。
「だから、私は今日、無理矢理だったけど、松本先輩の視界に入りこめて、なぜか名前まで呼んでもらえて、それで満足。けじめがついたから、新しい恋を求めて頑張る。とりあえず、まずは聡志の奴をぶっ飛ばしてからね。」
そう言って、一瞬笑みを浮かべた私だけど、悠の表情は硬い。私はまた表情を引き締める。
「だけど、悠には、私とおんなじ後悔をして欲しくない。私は悠が羨ましかった、憧れの人が帰って来て、今、隣の席に座ってるんだから。なのに・・・悠、今のままでいいの?」
ねぇ、悠、何か言って?なんでそんな悲しそうな顔して黙ってるの?
「悠ちゃん。」
その時、悠を呼ぶ声が。その方を振り向いた私達は、そこにいた人の姿を見て驚いた。
「先輩、お帰りなさい。お待ちしてました。」
と考え抜いた言葉と共に、花束を渡した。
「ありがとう、岩武さん。」
カチカチの私に優しい笑顔を送ってくれた先輩は、こう言って、花束を受け取った。
(えっ?今、先輩確かに、岩武さんって・・・。)
まさか先輩が名前を呼んでくれるなんて・・・私は天にも昇る思いだったが、ふと我に返ると、慌てて舞台の袖に引っ込んだ。
本当は、そのまま席に戻らなければいけなかったんだけど、私は袖から、ずっと先輩の姿を見つめながら、話を聞いた。
さすがの先輩も、500人を超える後輩やお世話になった教職員を前に、緊張を隠せなかったし、その話も決して上手ではなかった。でも
「夢は必ず叶うわけじゃないけど、夢を持ち、それを追い求めることは尊いことだと思う。」
「僕たちは1人じゃない。家族がいて、先生たちがいて、そして大切な仲間達がいる。これからも僕はそんな仲間達と一緒に、夢を追いかけ続けて行きたい。」
と切々と、私達に語り掛けてくれた。そして話が終わり、先輩が壇上から一礼すると、構内はまた割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
私も精一杯の拍手を先輩に送った。
私達はこの後、一旦教室に戻ったあと解散。悠と帰宅の途に着いた私は、とにかく興奮していた。
「やっぱり松本先輩はカッコイイ~。」
「よかったね、由夏。そう言えば、花束渡した時、先輩、由夏に何か言ってたよね。なんて言われたの?」
「『ありがとう、岩武さん。』って言われたの。チョ~最高!」
大はしゃぎの私をニコニコしながら見守ってくれる悠。本当にいい子、大好き。だから言わなくっちゃ。
「ねぇ、悠。」
「うん?」
「私、やっぱり立候補してよかった。」
「松本先輩に名前、呼ばれたんだもんね。」
うん、でもそれだけじゃないんだよ。
「ずっと後悔してたんだ。」
「何を?」
「松本先輩に何も言わなかったこと。」
「えっ?」
驚いたように、私の顔を見る悠。
「コクって、どうにかなったとは思ってないし、木本先輩に逆立ちしたって、勝てなかったのもわかってる。でもさ、松本先輩と2年間も同じ学校に通って、ずっと憧れてて。なのに、ただの1度も話すことも出来なくて、私の事になんか、気付きもしないで、松本先輩は卒業しちゃった。コクって、あっさり振られたって、それでも松本先輩に少なくても、私という存在を知らしめることはできた。それすらないって、あまりにも悔しかった、悲しかった。そう思ったのは、先輩が卒業しちゃってからなんだけどね・・・。」
私はここで1つため息をついてしまう。
「だから、私は今日、無理矢理だったけど、松本先輩の視界に入りこめて、なぜか名前まで呼んでもらえて、それで満足。けじめがついたから、新しい恋を求めて頑張る。とりあえず、まずは聡志の奴をぶっ飛ばしてからね。」
そう言って、一瞬笑みを浮かべた私だけど、悠の表情は硬い。私はまた表情を引き締める。
「だけど、悠には、私とおんなじ後悔をして欲しくない。私は悠が羨ましかった、憧れの人が帰って来て、今、隣の席に座ってるんだから。なのに・・・悠、今のままでいいの?」
ねぇ、悠、何か言って?なんでそんな悲しそうな顔して黙ってるの?
「悠ちゃん。」
その時、悠を呼ぶ声が。その方を振り向いた私達は、そこにいた人の姿を見て驚いた。