Smile  Again  〜本当の気持ち〜
悠から電話が、かかって来たのは、9時を少し過ぎた頃だった。


とうとう先輩から「悠」と呼ばれ、「好きだ」って言われたんだって。もちろん悠の返事は「ミートゥ」以外にあり得ない。出会ってから3ヶ月って考えたら、早いかもしれない。でも悠にしたら、高校に入ってから、ううん、その前からずっと抱いていた一途な慕いが、ついに実ったんだ。


「よかったね、悠。本当におめでとう。」


「ありがとう。由夏にはいっぱい心配かけちゃったし、いっぱい応援してもらったよね。」


「ううん、学校でも言ったけど、悠には私の二の舞だけは、絶対に踏んで欲しくなかったんだ。だから自分のことのように嬉しいよ。」


それは嘘偽りない私の気持ち。


「由夏には感謝してる。だから、今度は私の番だよね。」


「えっ?」


「由夏が自分の気持ちに素直になれた時、その時は私、全力で由夏を応援するから!」


「悠・・・。」


この後、少ししてから、私達は電話を切った。


次の日から3連休で、学校は休み。塾も休みだった私は家でずっと勉強に明け暮れてたけど、その合間にフッと考え事をしてしまっていた。


『由夏ちゃんは、もっと自分の気持ちに素直になった方がいいんじゃないかな?』


みどりさんの言葉が蘇ってくる、あれはどういう意味?


『由夏ちゃんの心の中にいるのは、本当に松本くんなのかな?』


きちんとお話ししたのは、昨日が初めてなのに、みどりさんはなんであんなことを言ったんだろう?


私は松本先輩に憧れてた。あの人の一挙手一投足が見たくて、私はグラウンドに通い、試合の応援にも出来る限り足を運んだ。先輩が卒業し、自分が受験生となった今だって、さすがに東京ドームには行けないけど、テレビ中継は可能な限り見てる。


先輩に花束を渡し、言葉を交わした昨日のあの時間は、私の人生の中でも1、2を争う幸せな時間だった。でも・・・。


私はいつもグラウンドで先輩だけを見てた?8割はそうだったけど、2割はあいつのことを・・・ううん、ひょっとしたら7:3だったかもしれない。


違う、先輩が高校にいた時は、悠のように先輩一筋だった。少なくとも、私はあいつへの想いに気付いてなかった、あの夏の日までは。それだって、もうとっくに消滅した。


そうだよ、あんないい加減で、デリカシーのない奴。急に人当たり良くして、悠と白鳥先輩の為に一時的に仲直りしようなんて言われて、幼なじみチックになって、すっかりその気にさせられてた。


悠と白鳥先輩はめでたくカレカノになって、私達の限定仲直りはもう期間終了。だいたい、人が、緊張しきってる時に、あんなひどいこと言うなんて信じられない。悔しくて、悲しくて、教室で不覚にも涙なんか見せちゃった。


絶対許せない、文句言ってやる!


私は携帯を取り出した、聡志の番号ゲットしといてよかった、てさ・・・。


そっか、もしかけたら、これが聡志との初通話。それでいきなりケンカ売るの?いや、ケンカ売って来たのはあいつの方なんだけど、でも、いくらなんでも・・・。


でも、みどりさん。あいつは絶対に違いますからね、みどりさんには申し訳ないですけど、私は今でも松本先輩が1番なんです!
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