Smile  Again  〜本当の気持ち〜
昼休み、いつも通りに屋上に上がって来た私達。改めて悠におめでとうを言った私は、その後、悠を質問攻め。恥ずかしがる悠から、告白の状況などを聞き出して、盛り上がった。


だけど、その話が一段落ついたあと、今度は悠が言った。


「ところで由夏、塚原くんのことなんだけど・・・。」


その名前を聞いた途端に、私の頭に血が昇る。


「あんな奴のこと、口に出さないで。せっかくのお弁当がマズくなっちゃう。」


あいつへの腹立たしさに加えて、みっともないところを悠を始めとしたクラスメイト達に、見せてしまった気恥ずかしさが加わって、私の口調はキツくなる。


「そう・・・。」


私の勢いに圧されたか、悠はそれ以上のことを言おうとはしなかった。


そのまま、気分の悪い1日を過ごした私は、授業が終わるとすぐに学校を出た。


家に帰りながら、懸命に心を鎮める努力をして、これ以上引きずらないように、机に向かった私。夕食を挟んで、ようやく勉強のピッチが上がって来たと思ってたら、携帯が騒ぎ出した。


(こんな時に誰?)


面倒だなと思いながら、ディスプレイに浮かび上がった名前に目をやった私は、思わず息を呑んだ。


(聡志・・・。)


そう、聡志からだ。この間、ケー番を交換してから、ついに初めてかかって来た電話。今日は、あれから私達は当然口もきかず、目も合わさず。それなのに、何で今更? 


すぐに着信拒否にしてやろうと、携帯を手に取ったけど、それも子供じみてるかと、思い直して、通話ボタンを押した。


「もしもし、何の用?」


「ゴメン、勉強中だったか?」


「当たり前でしょ。」


「わかった、手短に済ますから。」


尖った声を出した私に対して、冷静な受け答えの聡志。私がちょっと調子が狂ってると


「由夏、今朝はゴメンな。」


「えっ?」


「昨日も、ひどいことを言っちまった。本当にすまなかった。」


「聡志・・・。」


驚きのあまり、ほとんど言葉の出ない私。


「本当はみんなの前で謝るべきなんだろうけど、少しでも早く謝った方がいいと思って・・・。」


「うん、まぁ、その、わかってくれればいいの。私だって、いきなり突っかかったのはいけなかったし・・・。」


「いや、お前が怒るのは、当然だと思う。だから由夏は悪くないよ。」


「・・・。」


「先輩達、よかったな。」


「えっ?」


今朝あんな言い合いをして、まさか、こんなあっさり謝られるなんて、思ってもみなくて、戸惑ってるところに、話題が突然変わり、私はついて行けない。


「お前に無理矢理、一時的仲直りしてもらった甲斐が、少しはあったのかな?」


「・・・。」


「それもありがとう、感謝してる。明日からはもう、無理してくんなくてもいいから。」


聡志・・・。


「じゃ、おやすみ。勉強頑張れよ。」


「ちょっと、聡志!」


私は慌てて呼び掛けたけど、聞こえなかったのか、無視したのか、聡志は答えることなく、電話を切った。


(聡志のバカ。せっかく謝ってくれたのに、一言余計なんだよ。これじゃ、台無しじゃん・・・。)


私は悲しかった。
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