Smile Again 〜本当の気持ち〜
加奈にからかわれて、すっかりご機嫌斜めになった私は、ふくれっ面のまま、玄関に入った。
「あら、おかえりなさい。」
「ただいま。」
声を掛けてくれたお母さんを見向きもしないで、2階の自分の部屋に向かおうとすると
「由夏、ちょっと話があるんだけど。」
と呼び止められた。
「なに?」
ぶっきらぼうに振り向いた私に、お母さんはなぜか満面の笑み。
「実はね、塚原さんに旅行に誘われたのよ。」
「旅行?」
「ほら、今度3連休があるじゃない。」
ああ、そうか。誰かが、クリスマスイブが振替休日になって土日と合わせて3連休とか言ってたな。今年は受験生だし、もともと女子会イブしか経験したことないから、あんまり興味ないけど。
「塚原さんのご主人が、会社の忘年会の福引で、ペアの旅行券が当たったらしいのよ。」
「へぇ、今時、リッチな会社だね。」
「それで、その3連休でどこか行かない?って。」
そうですか、それはよろしゅうございました、どうぞごゆっくり・・・って、ちょっと待って。
「でも、当たったのは塚原のおじさんでしょ?なんで夫婦で行かないの?おじさん、何か別の用事があるの?」
「まさか、あの夫婦がイブに別行動なんて、あり得ないでしょ。」
じゃ、どういうこと?ま、まさか・・・。
「ウチの夫婦と4人で行かないか?って。」
「はぁ?」
私は耳を疑った。素っ頓狂な親だとは思っていたけど、まさか受験を1ヶ月後に控えた大事な一人娘をほったらかしにして、旅行って・・・あり得ないでしょ。
呆れて、モノが言えない私に構わず、お母さんは楽しそうに続ける。
「この時期、クリスマスで都会のホテルなんかは高いけど、ちょっと地方に行けば、穴場の温泉が結構リーズナブルに泊まれるのよ。それに2人分はタダだし、最高でしょ。」
最高でしょ、ってね・・・。
「あのさ、私が今、どんな時期だかわかってるの?」
「受験の追い込みでしょ。大変よねぇ、だから静かな環境で頑張ってもらおうと思って。どうせ、私達が居ても勉強見てあげられるわけじゃないし、邪魔でしょ?」
邪魔って・・・お母様、そういう時だからこそ、いろいろサポートして下さるのが、普通の親なんじゃございませんか?
「ねぇ、そんな大事な時期に、娘をほったらかしにして、心配じゃないの?」
なんとか正気を取り戻してくれないかと、私は言い募るけど
「あら、1人じゃ寂しいの?」
あの、寂しいとかじゃなくてさ・・・。襲って来る頭痛に、懸命に耐えようとしている私の耳に、更に信じられない一言が。
「じゃ、聡志くんにでも来てもらったら?」
「ええ〜!?」
こ、この人、何言い出してるの・・・?
「どうせ、聡志くんも1人なんだから、ちょうどいいじゃない。2人で切磋琢磨すれば、勉強もはかどるでしょ。」
二の句が告げないとは、まさにこのこと。私はしばし自分の母親の顔を茫然と見つめてしまった・・・。
「あら、おかえりなさい。」
「ただいま。」
声を掛けてくれたお母さんを見向きもしないで、2階の自分の部屋に向かおうとすると
「由夏、ちょっと話があるんだけど。」
と呼び止められた。
「なに?」
ぶっきらぼうに振り向いた私に、お母さんはなぜか満面の笑み。
「実はね、塚原さんに旅行に誘われたのよ。」
「旅行?」
「ほら、今度3連休があるじゃない。」
ああ、そうか。誰かが、クリスマスイブが振替休日になって土日と合わせて3連休とか言ってたな。今年は受験生だし、もともと女子会イブしか経験したことないから、あんまり興味ないけど。
「塚原さんのご主人が、会社の忘年会の福引で、ペアの旅行券が当たったらしいのよ。」
「へぇ、今時、リッチな会社だね。」
「それで、その3連休でどこか行かない?って。」
そうですか、それはよろしゅうございました、どうぞごゆっくり・・・って、ちょっと待って。
「でも、当たったのは塚原のおじさんでしょ?なんで夫婦で行かないの?おじさん、何か別の用事があるの?」
「まさか、あの夫婦がイブに別行動なんて、あり得ないでしょ。」
じゃ、どういうこと?ま、まさか・・・。
「ウチの夫婦と4人で行かないか?って。」
「はぁ?」
私は耳を疑った。素っ頓狂な親だとは思っていたけど、まさか受験を1ヶ月後に控えた大事な一人娘をほったらかしにして、旅行って・・・あり得ないでしょ。
呆れて、モノが言えない私に構わず、お母さんは楽しそうに続ける。
「この時期、クリスマスで都会のホテルなんかは高いけど、ちょっと地方に行けば、穴場の温泉が結構リーズナブルに泊まれるのよ。それに2人分はタダだし、最高でしょ。」
最高でしょ、ってね・・・。
「あのさ、私が今、どんな時期だかわかってるの?」
「受験の追い込みでしょ。大変よねぇ、だから静かな環境で頑張ってもらおうと思って。どうせ、私達が居ても勉強見てあげられるわけじゃないし、邪魔でしょ?」
邪魔って・・・お母様、そういう時だからこそ、いろいろサポートして下さるのが、普通の親なんじゃございませんか?
「ねぇ、そんな大事な時期に、娘をほったらかしにして、心配じゃないの?」
なんとか正気を取り戻してくれないかと、私は言い募るけど
「あら、1人じゃ寂しいの?」
あの、寂しいとかじゃなくてさ・・・。襲って来る頭痛に、懸命に耐えようとしている私の耳に、更に信じられない一言が。
「じゃ、聡志くんにでも来てもらったら?」
「ええ〜!?」
こ、この人、何言い出してるの・・・?
「どうせ、聡志くんも1人なんだから、ちょうどいいじゃない。2人で切磋琢磨すれば、勉強もはかどるでしょ。」
二の句が告げないとは、まさにこのこと。私はしばし自分の母親の顔を茫然と見つめてしまった・・・。