Smile  Again  〜本当の気持ち〜
翌朝、目を覚ますと、親は既に出かけたあとだった。申し訳程度に、用意されていた朝飯を平らげると、俺は予備校に向かった。


着けば、自習室は大盛況。誰が入って来ても、まるで関心を示さず、みんな自分の世界に没頭している。嫌でも本番が近いことを、思い知らされた俺は、慌てて空いている席を見つけると、参考書を開いた。


途中、昼食と夕食の調達に近くのコンビニに行った他は、本当にトイレに立ったくらい。俺もやる気になりゃ、こんなに集中して勉強出来るんだ、我ながら感心しながら、時計を見れば、夜の9時を回っていた。周りを見回せば、さすがに空席が目立っている、俺もそろそろ引き上げることにした。


自転車を転がして、誰もいない我が家に。贅沢は言えないが、コンビニ弁当が後3食続くかと思うとちょっとうんざり。今頃親達は、温泉浸かって、美味いメシ食って、いい気分なんだろうなと思うと腹もたってくるが、その一方で、親のありがたみも改めて思い知らされる。


そう言えば、由夏から夕飯誘われたんだっけな。やっぱり、ありがたくお受けするべきだったかな?あいつの料理の腕には正直驚かされた、あいつの手料理をいただけるなんて、次にそんなチャンスは巡って来るのかな?


明日はクリスマスイブ、あいつも勉強頑張ってるだろうから、せめて昼間にケーキでも差し入れてやるか。一緒に食べるくらいの息抜きは許されるよな・・・。


そんなことを考えながら、家に戻った俺は、まずは電気と暖房を入れて、ホッと一息入れようと思ったら、いきなりグラリと来た。


「おっ。」


そんな長い時間ではなかったが、結構揺れて、俺は慌てて食卓の下に潜り込んだ。揺れが収まると、すぐにテレビを付ける。震度4と速報が流れ、しかし津波の心配はなく、震源地から見て、親達の旅行先には影響なさそうだ。


一安心して、立ち上がると今度は携帯が鳴る。さすがに親が心配して、掛けて来たのかと思って、ディスプレイを見ると、由夏だ。


「もしもし、どうした?」


「聡志、今どこ?」


「家に帰って来たとこだけど。」


「じゃ、すぐ来て。」


何やら、切迫した声でそんなことを言い出すから、俺も心配になり


「何かあったのか?」


と慌てて聞くと


「何もないけど・・・怖いんだもん。」


との返事。


「でも、今ニュ-ス見てるけど、余震の心配もなさそうだぜ。」


「そうじゃなくて・・・1人でいるのが怖いの!」


「えっ?」


驚く俺に、由夏は


「とにかく、すぐ来て、お願い。」


半分泣きそうな声で言って来る。
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