Smile  Again  〜本当の気持ち〜
「一体どうしたんだよ。とにかく落ち着いて、話してみろ。」


「だから、この家に1人でいるのが、怖いんだってば!」


「はぁ?」


深刻な声を出している由夏には、申し訳ないが、俺には何を言ってるのか、さっぱりわからない。


「私、今まで1人で、一晩留守番したことなんてないんだもん。だからさっきから物音がするたびに、ビクビクしてて・・・。そこに今の地震でしょ、もう耐えられないよ。聡志、お願いだから、すぐに来て。」


こいつ、何寝言、言ってやがるんだ・・・。俺は思わず、声を強めて言った。


「何、子供みたいなこと、言ってるんだ。しっかりしろよ、18歳の高校3年生が。」


「だって、本当に怖いんだもん。正直に言えば、あの話が出た時、ヤバいと思ったんだよ。1人で留守番なんて、絶対無理って。だけど、さすがに言えなくて・・・今更ながら悠か加奈を頼めばよかったと思ってるけど、この時間じゃ、今から2人を呼ぶわけにいかないし・・・。」


「お前、自分が何言ってるか、わかってるのかよ。」


前にもこんな会話をしたような気がするが、今の状況は、あの時よりよっぽどまずいぞ。


「もうお前は18歳の大人の女なんだ。俺だって
18歳の男、その俺達がこんな時間に1つの家の中で2人きりになったら、何が起こりうるか。まさか、わからないわけじゃねぇだろ。」


「・・・。」


「何を怖がってんのか知らないけど、トイレ以外にカギの掛かる部屋もない家に、今から男を呼ぶ方が、よっぽど危ねぇんじゃねぇの?」


「・・・。」


「それとも、もう全部、覚悟は出来てるって言うのかよ。」


「・・・出来て、ない・・・。」


その由夏の返事に、俺は思わずため息をつく。


「そうだろ。だったら、どうしようもねぇだろ。早く寝ちまえ。」


突き放すように言う俺。可哀想だとは思うが、どうしてやることも出来ない現実に、俺はこう言うしかない。だけど


「聡志って・・・意地悪になったよね。」


「えっ?」


本当に悲しそうな声を出す由夏。


「由夏が人一倍怖がりだって、知ってるくせに・・・。」


「由夏・・・。」


何が「由夏」だよ、急に幼児返りしやがって・・・。


「このままじゃ寝られるわけないじゃん。聡志しか頼める人がいないんだよ。だから、お願い!」


もはや哀願に近い声の由夏。たぶん、涙ぐんでるのも、容易に想像できる。昔の泣き虫由夏じゃない、俺はずっとそう思っていたが、実はその本質は何も変わっていなかったことに、俺は今更ながら気づかされた。


「わかった。とにかく今から、すぐ行くよ。」


「ありがとう。」


心からホッとした声を出す由夏。


「ただし、そのあとどうなっても、俺は本当に知らないぞ。それでもいいんだな?」


「とにかく待ってる。あと、携帯このまま切らないで。お願いね。」


肝心の質問には答えもしない。これじゃ、もはや、ただの駄々っ子だ・・・。


「・・・了解。」


これから、どうなるんだ・・・俺は再び外出準備を始めた自分にそう問いかけて、また深いため息をついた。
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