Smile  Again  〜本当の気持ち〜
宴は尚も続いていたけど、アルコ-ルも回って来て、ほろ酔い気分の親達が、主役の私達を差し置いて、盛り上がり始めたので、私の部屋に退避した。


「由夏の部屋に入るなんて、何年ぶりかな?」


「そうだね。」


「失礼します。」


こうなるんじゃないかと思って、片付けといてよかったと思いながら、私は聡志を招き入れる。


「フーン、可愛らしい部屋だな。まるで女の子の部屋みたいだ。」


「なにそれ、どういう意味?」


「ゴメン、冗談だよ。確かにお前は女の子だよ。この前は、1人で怖いって、震えてたもんな。」


「聡志!」


思わず聡志をにらむ私。でも内心はちょっとドキドキしてるんだ。だって悠があんなこと言うんだもん。なんか意識しちゃって、昼間グラウンドで声を掛けなかったのは、正直ちょっと照れ臭かったのもあったんだ。


「そう言えば、沖田くんに聞いたんだけど、追い出し試合あるんだって?」


「ああ。みんなブランクがあって、毎日練習してる現役には勝てるわけないけど、まぁみっともない試合にならないように、精一杯やるよ。」


「応援に行くよ、悠も行くって。」


「そうか、ありがとう。」


白鳥先輩が帰って来てから、徐々に雪解けム-ドになって来た私達。そして、あの暮れの出来事があって、私の方は、これまでの聡志に対するわだかまりが完全に消えた気がする。


あれ以来、少なくとも、仲良しの幼なじみには戻れたと思う。会えば挨拶を交わし、さっきみたいなバカ話をして、一緒に帰る機会も増えたし、メ-ルや電話もそんなに頻繁じゃないけど、近況を報告し合ったり、励まし合ったり・・・。


でも今、聡志に対する私の気持ちって、それ以上なのかな?去年の夏に、一回急に1人で盛り上がって、でもすぐに冷や水を掛けられてしまったから、わからなくなっちゃった。


「なぁ、由夏。」


そんなことを考えてる私に、聡志の呼ぶ声が聞こえる。


「今度、2人でどっか行かねぇか?」


「えっ?」


びっくりして見つめる私に、ちょっと照れ臭そうな聡志。


「受験も終わったし、その・・・なんだ。お互いの合格祝いを兼ねてさ。」


「いいよ。」


「えっ、マジで?」


あっさりOKした私に、聡志は驚いたようだった。


「うん、聡志が誘ってくれるなんて、思ってもみなかったから。」


「そっか・・・由夏、ありがとうな。」


「うん、こちらこそ。2人で出掛けるなんて、初めてだよね。」


「そうだよな。で、どこか行きたいとこ、あるか?」


「そうだなぁ、ちょっと考えていい?」


「もちろん。お前の好きな所でいいよ。」


「ありがとう。でも、聡志も考えてみて。」


「わかった。でも、なるべく早めに行こう。3月になると、大学でもう練習が始まるし。」


「そうなんだ。じゃ、2月中だね。」


「出来たら。」


「うん、わかった。」


トントン拍子で話が進んで、なんかビックリだけど。でも嬉しいな。


「由夏。」


「うん?」


「本当にありがとう、楽しみにしてるよ。」


「私も。」


結構、この時の私達、いい雰囲気だったと思う。
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